終わったはずの「平成」が続いているローカル線 「平成32年」表記の背景を探ると…

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 年が明けて2020年。元号でいえば、昨年の改元を経て令和2年になったのに、和歌山県の鉄道会社が「平成32年」の表記を使用しているとツイッターで話題だ。その理由を調べると、ローカル鉄道ならではの苦境が見えてきて-。

 和歌山県北部の貴志川線を運営する和歌山電鐵。同線はもともと南海電鉄が運営していたが、赤字で撤退した。その後、2006年に「公設民営」方式で新設された和歌山電鐵が経営を引き継ぎ、地道に再生に取り組んでいる。三毛猫の「たま」が路線東端の貴志駅の「駅長」を務めたことでも、一躍話題になった。

 平成32年と印字されているのは、路線の西端の和歌山駅でのみ配布される「精算済[ずみ]証」。同社の和歌山駅と一体になっているJR和歌山駅の自動改札を出るのに必要な券だ。記者が1月13日、実際に和歌山電鐵の電車に乗った後に和歌山駅で料金を精算すると、平成32年1月13日を意味する「32・1・13」と記された精算済証を手渡された。

 しかし、なぜいまだに「平成」を使っているのだろうか。和歌山電鐵の広報担当者は「精算済証の表記を直すのには相当なお金がかかるため、そのまま使っているんです」と話す。和歌山駅ホームにも、令和に改元された2019年5月から「当分の間、平成における年表示を継続させていただきます」とのお知らせを掲示しているという。

 和歌山電鐵は、少子高齢化による乗客減に加え、18年の台風21号による設備への被害や、関西空港閉鎖による訪日客減少の影響を引きずり、今も厳しい経営状態にあるという。珍しい平成表記の精算済証を目当てにした乗客が増えれば経営も少しは上向く、かもしれない。

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