東京メトロ銀座線渋谷駅の改装によって、同駅への動線が年明けの仕事始めから混雑しているという投稿をSNSで目にした。新駅舎の線路や改札が移動したために他路線の利用客が使う動線と交錯しているというのだ。既に、その解消に動き出している東京地下鉄株式会社の担当者に対策を聞いた。
銀座線渋谷駅は1月3日から新駅舎で運行を開始。仕事始めの6日になるとSNSで「混雑」に関する投稿が目立つようになった。ホームが約130メートル移動したことにより、従来は「棲み分け」されていた京王井の頭線~銀座線、JR線~銀座線の乗り換え客がJR中央改札付近で交錯するなど混雑が目立ち始めた。同駅は、上記のほか、東急の東横線&田園都市線、地下鉄(東京メトロ)の半蔵門線&副都心線、JRは山手線、埼京線、湘南新宿ラインなど多くの路線が絡む日本有数のターミナル駅だけに影響は大きかった。
SNSでは「渋谷を使わない星に行く」「銀座線、死ぬかと思った」「元に戻して」というストレートな反応から、「JR渋谷駅で品川行きに乗り換える人と銀座線の動線が見事に重なってカオス」「JR線や東横線に乗る人の波に、さらに銀座線の乗客を流し込むという、信じがたい動線の変更をしたため、通路や階段で人の大渋滞が生じ、ただ乗客に負担をかけるだけの結果となった」「これまで乗り換え動線が他の路線と分かれていたのがこれからは山手線の中央改札前を通ることになるから、他路線の人にとっても混雑が悪化するはず」などと具体的な事例を挙げて解説する投稿も続いた。
同駅はこれまで東急百貨店西館の中にあった。ホームからいきなりデパートの3階に出入りする改札もあり、記者は「独特の世界観を持つ地下鉄」という印象を持っていた。東京地下鉄株式会社の広報部は当サイトの取材に対して、「今回特に混雑しているとご指摘頂いている」場所として「東急百貨店内の階段」を挙げ、その対策を明かした。
同社の担当者は「(階段は)元々ご利用が多い場所であったことに加えて、井の頭線から銀座線への乗換のお客様のご利用が重なり、さらにご利用が多くなっている状況と捉えています」と現状を分析。対策として「従前から実施しておりました平日ラッシュ時間帯の約30名ほどの案内スタッフの増員に加えて、1月14日から当面の間、新たに以下の対応をしています」と説明した。
「以下」とは次の2点だ。(1) 迂回ルートとして、旧降車ホームを経由して銀座線に乗り換える東急百貨店内のエレベーター、エスカレーターを案内(始発から終車まで利用可能)(2) 通勤ラッシュ時間帯の平日7時半~9時の間、東急百貨店内の階段の下り階段の一部をロープで規制し、上り用のスペースとすることで、利用の多い上り階段を拡幅する。
その一方、JR東日本東京支社は1月29日から、渋谷駅3階に「中央東改札」を新設すると発表。これで銀座線渋谷駅への乗り換えが近くなり、利用客の分散も見込まれる。
いずれにしても、今回の改装は、渋谷駅が最終的に「完成」するとされる2027年に向けたプロセスの1つであることは確か。ツイッターには、現状を否定する声に対して「近視眼にすぎる」「あくまで過渡的なこと」と長期的なスパンで見るべきという意見も。また「動線の評判は最悪だけどホームに関しては最高」と、幅が旧駅の2倍となる12メートルに広がったホーム上の混雑が緩和されたことを評価する投稿も見られた。
東京地下鉄広報部は「弊社といたしましては、ハード面での対策については、引き続き、周辺再開発を含めた関係事業者の皆様とともに、より良い形となるよう検討していく所存です」とコメント。渋谷駅自体が成長過程にある生命体なのだと、ホーム上部に連なる「巨大生物の背骨」を思わせるオブジェを見上げながら、そう思った。