猫拳法の達人、ポーズが決まった!と思ったら虚無の顔だった…どうやって撮っているの? 撮影者に聞いた

太田 浩子 太田 浩子

 気持ちよさそうにお昼寝したり、自由に散歩したりする、のら猫さんは魅力的。ああ、なんだかうらやましい…。SNS上にはそんなのら猫さんたちの写真が日々あふれています。しかーし!のら猫さんたちはのんびりダラダラしてばかりではありません。躍動感あふれる動きで、癒しだけでなく笑いも届ける白猫さんがツイートで話題になっています。

 久方広之「のら猫拳」(@sakata_77)さんの「躍動感あるポーズが撮れたと思ったのに確認したらめっちゃ虚無の顔でこっち見てた」というツイートに31.4万を超えるいいね! と9.1万を超えるリツイートがつきました。立った状態で格闘技の技を繰り出そうとしているのか、はたまた隣の猫とキレのあるダンス中なのかという白猫さんの表情を確認すると…「無」…ですね。

 リプ欄には「完全に達人」や「腹筋崩壊しそうになりました」、「ナントも言えない感じが...ネコでもこんなに表情豊かなんですね...(=^・・^=)」「ほう?小僧、我をとって楽しいか?と聞かれている気がする。」「完全に仙人です。(^^)」「やべぇ、コイツには勝てねぇ…!」「じわじわくるw」と状況を想像しながらニヤニヤした人が多数。

 久方さんは猫じゃらしで遊びながら猫が拳法をしているような写真を撮る写真家で、『のら猫拳』『ねこ拳撮影術』などの著作も出されています。話題になった虚無の猫写真のことや撮影方法について久方さんに聞きました。

 ──格闘技のようなのら猫さんの写真がツイートにあふれていますが、そもそもなぜ猫の写真を撮るようになったのですか?

 もともと猫が好きで、のら猫を撮り歩いていました。たまたま猫じゃらしを使って撮影したところ、予想以上に反応がよく、「もしかして人間と遊びたい猫って結構いるのでは?」と感じ、現在でも撮影を続けております。

 ──話題になった猫さんの虚無の表情が撮れたときはどう思われましたか?

 撮ったときは遊ぶことに夢中で、こんな表情になっていたことは気づきませんでしたが家で写真をみて吹き出してしまいました。実は、猫じゃらしで遊んでいる最中に、動きながら「虚無の表情」あるいは「不満げにこちらを見てくる」ということはたびたび起こります。

 ──そうなんですね! なぜそんな表情に?

 通常は猫じゃらしを追っている時は、猫じゃらしを追う事に集中しているためどちらかと言うと楽しそうというか、興奮したような表情が撮れることが多いです。

 しかし猫たちの予想よりはるか高いところで猫じゃらしを振ってしまうと、猫たちは反射的に飛び上がってみたものの、途中で明らかにおもちゃに手が届かないことに気づきます。そうすると、猫じゃらしを振っている人間、つまり私の方を見て、「ちゃんと手が届く範囲で猫じゃらしを振れ」というサインを込めてこのような表情で見てくるのです。

 どの猫もこういう表情をするわけではないですが、遊んでいる最中に人間にサインを送ってくる猫は多くいます。さまざまな猫じゃらしの振り方があるのですが、好みの振り方でない時も「その振り方ではないぞ人間」と言っているかのように不満げにこちらを見てきます。彼らは「人間が猫じゃらしで遊んでくれている」ということを非常によく理解しているのです。

 ──もっとうまく遊んでよって、表情で伝えてくるんですね(笑)。猫じゃらしで遊びながらどうやって写真を撮るんですか?

 片手で猫じゃらしを持って片手でカメラを持つスタイルです。撮影中はカメラのファインダーはみないので、一見難しそうですが、やってみると意外と簡単に撮影することができます。

 ──三脚を使わないんですね! 写真を撮る前に猫さんのところに通って仲良くなったりするのでしょうか、それとも行ってすぐに撮るのでしょうか?

 どちらの場合もあります。最初から猫じゃらしで遊んでくれる猫が多い地域もあります。しかし警戒心が強い猫が多い地域では、何度も通って、長い時間をかけて信頼関係を作りながら撮影に臨むこともあります。このとき大事なのはとにかく猫を脅かさないこととおやつを使わないことです。「この人間は、害のないやつだ。ただ単に遊びに来ただけなのだ」ということを猫に理解してもらうためです。

 ──猫じゃらしを20万円分も購入したとツイートされていましたね。大人買いがすぎます(笑)。

 猫じゃらしは1日の撮影で何度も消毒しますし、頻繁に新品に替えます。屋外ではどうしても猫じゃらしが汚れやすいことや、複数の猫が猫じゃらしをかじると猫同士の感染症の原因になる可能性もあります。なので汚れたり撮影エリアを変わったりするときは必ず猫じゃらしを清潔な状態にします。

 ちなみに室内の撮影のときは何種類も猫じゃらしを試しますが、屋外で使っている猫じゃらしは1種類だけです。とにかく丈夫で簡単に猫に壊されない、また猫に持っていかれにくい(のら猫のなかには、猫じゃらしを持ち去ることにこだわるコもいます)商品を使っています。

 ──なるほど、猫さんたちの健康を考えてのことなんですね。また、躍動感あふれる写真は、動きをねらって撮っているのでしょうか? それとも連写の偶然をねらっているのですか?

 これも両方の場合があります。とにかく猫のテンションが上がるように猫じゃらしを振ってランダムな予想できない動きをねらうこともありますし、背景や時間帯までしっかり計算して、過去にそのコを撮った経験から遊び始めて何分くらいで一番元気よく動くようになるのか逆算して撮影をスタートすることもあります。どちらが良いかは天気や気温、猫の状態や反応をみて経験的に判断しています。

 ──出されている本のことも教えてください。

 『のら猫拳』は約10万枚撮影した写真から厳選した力作です。「こんなポーズは2度と撮れないな」と言うような奇跡的なカットも多数ありますし、ロケ地に何日も泊まり込んで撮影した渾身のカットもあります。

 『ねこ拳撮影術』はその撮影技法をまとめ、お家の猫ちゃんでも撮影できる方法を記載しています。本の売り上げの一部は撮影させてもらった猫たちの世話人の方の支援などに当てさせていただいておりますで、ぜひとも書店やネットで購入していただければと思います。

 久方さんの撮影術を取り入れたら、我が家の猫さんもいつもと違う表情を見せてくれるかもしれませんね! ちなみに久方さんがお使いのカメラは「Olympus E-M1Mk2」だそうです。

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