「私は人間」…生後1カ月で保護、大切に育てた猫は夫婦の「一人っ子」に 子猫を亡くした悲しみも癒す

渡辺 陽 渡辺 陽

伊藤あんちゃんは、駅前でカラスに襲われていたところを保護された。とても小さくて、無事に育つかどうか不安になるほどだったが、すくすく成長し、いまでは自分のことを猫ではなく人間だと思っている。

先代に似た猫

2016年9月13日、群馬県に住む伊藤さんはあんちゃんに出会った。駅前で3羽のカラスに子猫が襲われていたのだが、たまたま通りかかった伊藤さんの弟が、カラスを追い払ったのだ。いつもは使わない駅だったのだが、偶然現場に遭遇したのだという。あんちゃんは1匹でいて、周囲に兄弟やお母さん猫は見当たらなかった。

「その日は、偶然にも以前飼っていた猫の命日の一日前だったんです。柄や色もそっくりで、おでこにMの字の模様があるところも同じ。そろそろ新たに猫を飼いたいなと思っていたところだったので、飼うことにしたんです」

あんちゃんに会うために友人が来る家に

雨が降っていたのであんちゃんは、少し濡れていた。カラスに襲われた後、知らないところに来て不安だったのか小刻みに震えていた。

伊藤さんのご主人は、あんちゃんがあまりにも小さかったので、本当に育てられるのか心配した。

翌日、動物病院に連れて行くと、生後1カ月くらいだと言われた。最初はミルクをスポイトで飲ませて、3日目くらいからふやかしたフードを与えた。

一週間くらい経った時、真菌に感染して毛が抜けてきたが、一週間もすると治ってきて、あんちゃんはすくすく育った。家族にはすぐに懐き、最初心配していたご主人も猫の可愛らしさにすっかりはまってしまった。

「あんと快適に暮らすために家を買ったのですが、あんに会いたいと友達が来てくれるようになりました。まるで子供のように思っています」

私は人間よ

産まれて間もない頃に保護されて人と暮らし始めたので、あんちゃんは、自分のことを猫だと思っていない。人間だと思っているという。

「おやつの時間に呼ぶとすぐに来ますし、一緒に座ってテレビを見たり、布団で寝たりするんです」

トイレットペーパーで遊ぶのが大好きで、前脚で引っ掻いて引き出しくしゃくしゃにしてしまう。トイレのドアは開けておけないという。特技は、チュールを立って食べること。器用にぺろぺろなめて食べる。ペースト状のものが好きなのか、普段は決まったフードしか食べないが、ケーキについているクリームにも目がない。

生後3日目の子猫ばぶちゃん

3年間、一人っ子として可愛がられてきたあんちゃんだが、2019年8月27日、伊藤さんは友人が保護した生後3日目くらいの子猫を預かった。名前は、ばぶちゃんにした。あんちゃんは子猫が来ると、3~4日うなりっぱなしで、時には猫パンチを食らわせようとした。「知らない生き物がきた」と、夜も眠れないくらい気が立っていた。

しかし、深夜、ばぶちゃんにミルクをあげていると、違う部屋から様子を見に来ることもあり、伊藤さんは、そんなあんちゃんを愛おしく思った。

残念ながらばぶちゃんは、伊藤さん宅に来てから3日目に亡くなってしまい、夫妻は悲しみに暮れていた。

「でも、あんちゃんがおなかを出してひっくりかえったり、可愛い声で鳴いてくれたりしたおかげでなんとか乗り越えられました」

ばぶちゃんは、玄関先に埋葬し、そこにはレモンの木を植えたという。

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