もう一冊は「寅さんのことば 生きてる? そら結構だ」(幻冬舎、税別1100円)。作品に登場する寅さんの言葉が佐藤氏の解説と共に紹介される。タイトルの「生きてる?そら結構だ」は渥美さん生前最後の出演作となった第48作「寅次郎紅の花」(95年)からの引用だ。
佐藤氏は都内で出版記念トークショーを行い、誕生日(8月9日)と名字が同じで、新作にも出演したシリーズ常連の俳優・佐藤蛾次郎と共演した。映画に先んじたフジテレビ版ドラマ「男はつらいよ」で、当初のタイトルは「愚兄賢妹」だったこと。言うまでもなく、愚兄とは寅次郎、賢妹はさくら(テレビ版は長山藍子)だが、そんな固い題名が「男はつらいよ」になったのは、渥美さんが鼻歌でよく歌っていたという北島三郎の「意地のすじがね」という曲の歌詞にも由来していること。そんなトリビアが披露された。
佐藤氏は当サイトの取材に対し「寅さん映画は、旅先の寅さんが柴又のさくらを想い、さくらが旅先の寅さんを想う。“人が人を想う”素晴らしさ、美しさに溢れています。寅さんの恋は、相手を想うことの美しさでもあります。天才俳優・渥美清の絶妙の演技に笑いながら、寅さんの心情に共感する映画体験は何事にも変えがたいです」と魅力を指摘。新作公開に向けて「『お帰り 寅さん』は、おなじみの登場人物たちの“現在”を知ることの嬉しさだけでなく、観客も満男やさくらと一緒に“寅さんを想う”ことができる最高の映画体験です」と解説した。