帰ってきた寅さん、ファッションにも影響か “肩がけテク”がフィット

大西 昭彦 大西 昭彦

 寅さんが、帰ってくる。シリーズ50作目となる映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』が12月27日から公開予定で、正月映画の目玉になりそうだ。それもあってか、寅さんファッションにも注目が集まっているという。オーバーサイズのジャケットを、袖をとおさずサッと肩がけするあのスタイルだ。

 1960年代から70年代、寅さんにかぎらず、網走番外地の健さん(高倉健)もトレンチを肩がけにしていたし、文太さんもオーバーサイズのジャケットを肩がけ。タイプはちがえど、いずれもヤクザな稼業を衣装で表現していた。その“いかにも”感がここしばらくは敬遠されてきた感があったが、いまになってふたたび注目されている。

 「抜け感重視のいまの流れに、この“肩がけテク”がうまくフィットした」と話すのはアパレルメーカの元パタンナーだ。そのスタイルは1980年代に流行した襟幅が広いダブルのジャケットを思わせる。「ただ上半身がふくらむため、ボトムは軽みをもたせるのがいい。コーデには気をつけたい」という。

 デニムジャケット(Gジャン)を肩がけにしていた神戸山手大学の女子大生は、「ワントーンのときにアクセントになる」と話す。「男性っぽいアイテムなので、ちょっと肩からズラして」着ているそうだ。

 街を歩いていても、たしかにジャケットを肩がけにした女性を目にする。とはいえ、20代や30代の女性にとって寅さんは馴染みがない。それも当然で、寅さんを演じ続けた渥美清さんが亡くなってすでに23年がたつ。にもかかわらず、それ以降もときどき寅さんは世間に舞いもどってきた。

 ファッションの世界では、女性誌『Domani』が2011年に“寅カジ”を特集。モデルの知花くららさんが、寅さん風ジャケットで表紙を飾った。この年の12月、WOWOWが「寅さん女子短期大学」という番組をオンエア。恋愛・ファッション・一人旅という視点から、精神科医の名越康文さんが寅さんを分析し、モデルの冨永愛さんや山田洋次監督も登場した。2013年にはビューティフルピープルが、「EDOMAE TRAD」と題して寅さんファッションをテーマに春夏コレクションを発表している。

 さらに今年の夏には、ビームスが「男はつらいよ ビームス篇」と題して、コラボレーション企画を開催した。寅さんをモチーフにしたグッズ販売。現在は映画の封切りをひかえ、企画第2弾がスタートしている。

 シリーズ第1作「男がつらいよ」が封切られてから、今年でちょうど50年。前作(第49作)「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」から数えても22年になる。この間、BS放送局などでいく度もシリーズ全作が放送された。たとえ“現役時”の寅さんを知らなくても、寅さんブランドはまだまだ市場価値があるようだ。

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