「ブランケット貸出終了のお知らせ」
「ご希望のお客様は、ロビーのシネマストアにてお買い求めくださいませ。(¥350)」
8月初旬。映画を見るため、いつものように神戸・三宮の商業ビル「ミント神戸」内にある映画館「OSシネマズミント神戸」を訪れると、そんな見慣れない掲示が出ていることに気がついた。冷房が効いた夏場の映画館は、快適な半面、人によっては軽く羽織るものが欠かせない。劇場が無料で貸してくれるブランケットを重宝している人も少なくないはずなのに、なぜそのサービスを中止したのか。同館を運営するオーエス株式社や関係者に取材すると、サービス業者ならではの苦しい裏事情が見えてきた。
同社はOSシネマズミント神戸のほか、OSシネマズ神戸ハーバーランド、TOHOシネマズ西宮OS(西宮市)も運営している(西宮はTOHOシネマズと共同)。いずれも複数のスクリーンで多くの話題作を上映するシネコン形式で、連日千人単位の利用がある。
同社によると、貸し出しサービスを終了したのは実は3カ月ほど前の5月9日頃からで、2012年頃からサービスを実施していたOSシネマズミント神戸と、13年にオープンしたOSシネマズ神戸ハーバーランドで、同時に取りやめたという。理由について、OSシネマズミント神戸の支配人伊川泰史さんは「決してこれまでが不衛生だったわけではありませんが、お客さまに自由にご利用いただく形より安心の『新品』を販売することにいたしました」と説明。その上で「正直、年々人件費が上昇している中、無償サービスに対して使用後の点検や洗浄、提供準備の作業にもスタッフ経費が生じています。全体的なバランスを考慮した結果、こうするしかないという結論に至りました」と打ち明け、「こちらの都合、言い訳ばかりで恐縮ですが、ご理解いただけると幸甚に存じます」と訴える。