東京高検が、埼玉県熊谷市で住民6人を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われたペルー人、ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)に対し、心神耗弱を理由に一審の死刑を破棄して無期懲役とした二審判決について、上告を断念したと明らかにしたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は20日、当サイトの取材に対し、「これで事実上、被告の死刑はなくなった」と指摘。被告側は心神喪失による無罪を主張して18日に上告しているため、裁判は行われるが、同氏は「被告に無期懲役より重い刑が科されることはなくなった」と解説した。
妻の加藤美和子さん(当時41)、長女(当時小学5年)と次女(同2年)を殺害された夫の加藤さん(46)は上告断念を受けて19日に行われた記者会見で「やるせない気持ちでいっぱいです。絶望しか思い浮かばない。検察の説明は全く納得できない」と言葉を絞り出した。加藤さんは「なぜ上告して闘い続けないのか分からなかった。死刑でも無期でも、どちらにしても家族は帰ってこないが、無期懲役になるのは納得がいかない」とし、「家族には謝ることしかできない。こんな危険な人を世の中に出してはいけない」と訴えた。
高検の久木元伸次席検事は19日に「遺族の心情も踏まえ、判決内容を慎重に検討したが、適法な上告理由が見いだせず、残念ながら上告を断念せざるを得ない」とコメント。完全責任能力を認めた一審判決に対し、5日の二審東京高裁判決は心神耗弱を認め、統合失調症による妄想が犯行全般に影響を与えたと判断して刑を軽くしていた。
二審判決によると、被告は2015年9月14~16日、金品を奪う目的で住宅3軒に侵入し、当時50代の夫婦、80代の女性、40代の女性と10歳の長女、7歳の次女の計6人を包丁で刺すなどして殺害した。小川氏は4年前の事件直後から遺族の加藤さんに寄り添い、初公判から判決まで埼玉地裁で傍聴するなど密着取材を続けてきた。