「タピる」が新語・流行語大賞のトップテンに入るなど、2019年はタピオカドリンクが空前のブームを迎えた。1990年代前半に小粒タイプが話題となり、2008年の台湾ブランド上陸で黒い大粒タイプが普及し、そのブラック系を引き継いだ今回が第3次ブームに。タピオカ自体は決して目新しいものではないのだ。改めて、これまでのブームと違う点は何か、1年の締めくくりに検証した。
タピオカドリンクのターゲットとなる10~20代の女性であふれる東京・渋谷。この街の「顔」でもある商業施設「SHIBUYA109」を展開する株式会社SHIBUYA109エンタテイメント運営のオウンドメディア「109ニュース シブヤ編集部(以下109ニュース)」に見解を聞いた。
竹内彩編集長は第3次ブームの特徴として「SNS映え」を指摘。「インスタに投稿して映えることを意識したパッケージデザインの商品が人気です」と解説した。確かに前回ブームの08年から10年間で、スマホの普及などSNSを巡る環境は急速に進化した。
ならば、飲み終えた後で容器を持ち帰ってコレクションする人もいるのだろうか。竹内編集長は「それはさすがにないですね。中身入りの画像が必要なわけであって、空になった容器はいらない。写真だけアップし、あとは飲んで捨てます」と説明した。
そこから容器のゴミ問題も起こる。飲みきれない中身を残して路上に捨てるケースだ。オブジェとして撮影してアップすれば、目的は達したことになる。味よりも、「いいね」をたくさんもらいたい。
記者はこの状況に対し、1972年頃の「仮面ライダースナック」を思い出した。購入する男子小学生の多くはおまけのカードが目当てで、中身は食べずに路上などに捨てるという現象が社会問題化したのだ。この投棄問題と47年後の事案とを単純に比較はできないが、本筋である中身を味わう行為より、そこに付随したもの(カードやSNS画像)が主役となった「主客転倒」という意味で共通する現象ではないかと感じた。
閑話休題。もう1点、ある。これまでのブームと違う特徴は「舌が肥えた」こと。つまり、過当競争によって「おいしくなった」ということだ。
竹内編集長は「台湾から上陸した店舗など、本格的で『ちゃんとおいしい』商品がはやっています。若い子たちもこのブームで結構いろんなものを飲んでいるので、ほんとに『タピオカの舌が肥えている』じゃないですけど、それはあると思う。タピオカ自体の弾力や味もお店によって違っていますし、ミルクティーの味も全然違う。飲料の種類も増えて、フルーツティーとかも結構ありますし」。109ニュースでは、味、ボリューム、パール(タピオカ)の食感、パッケージデザイン、値段の5項目で渋谷の専門店を飲み比べする企画記事を出してきた。
SHIBUYA109エンタテイメントが作成した「タピオカMAP」掲載店の中から、「可愛く写真映えする」と推薦された「Tapista渋谷店」を訪ねた。パステルカラーを基調とした店内で、季節限定商品の「ラズベリー・白雪ショコラ」を購入。もはや「飲むパフェ」である。クリスマス仕様の季節ものとしてインスタ映えしそうだ。そして、最後の一粒まで飲み干した。
最後に付け加えておこう。タピオカはあくまで「トッピング」の対象であり、最初から入っているわけではない。その有無や分量は購入者の「任意」によるという店も増えている。量の選択肢は複数あり、「なし」も可能。ベースになるドリンクも一般的なミルクティーだけでなく、茶やジュース等の種類が多様化。甘さも0%から数段階で選べる。
記者はホワイトチョコやホイップクリームがたっぷり入った「白雪ショコラ」で甘さ酔いしていたので、ハシゴした別の店ではウーロン茶をベースに「タピオカなし、甘さゼロ」で注文。飲みながら「これ、普通にウーロン茶やん」と突っ込んだ。