「連れ出す大人」「ついて行く子供」 誘拐家出事件における心理の相違点

犯罪心理の観点から再発防止を考える

中村 大輔 中村 大輔
栃木県小山市内から大阪へ向けて移送される伊藤仁士容疑者=24日午前(提供・共同通信社)
栃木県小山市内から大阪へ向けて移送される伊藤仁士容疑者=24日午前(提供・共同通信社)

子供時代は、自分で動かなくても親や先生が気にかけてサポートを得る機会もありますが、大人になると自分の力で人生を設計していかなければなりません。そのため、自発的で社会的な問題解決の方法を獲得することが課題となります。

一方、こうした事件は大人に声を掛けられても、子供が察知して距離を取ることができればよいのですが、SNS上でメッセージをやり取りしてしまうケースでは、大人側が相談相手のような立場で接しており、「親切にしてもらったのだから応えなくてはいけない」「優しくしてくれるからいい人だろう」と、ついて行ってしまうことが考えられます。

また、家出をする背景には、「帰ったら親に叱られると思った」「意地になっていた」「一人で生きていきたかった」など、様々な理由があり、中には「自分を探してほしかった」と語った子もいました。

自我の成長途上にあり、親の考えに矛盾や窮屈さを感じて対決し、自分の生き方を見つけようと外の世界に飛び出していく旅立ちの物語が背景にあることも珍しくはありません。ここに過去を取り戻そうとする大人側の修復の物語が合致してしまい、本人たちは自覚しないままに違法行為へと足を踏み入れてしまうこともあります。

大人側も子供側も、孤独や寂しさを抱えているが…

こうした事案の大人側も子供側も、孤独や寂しさを抱えていますが、双方の本質的な目的は異なります。SNSでメッセージを発信している子供がいたとしても、それを自ら直接解決しようとしなくても、子供の発達を理解している専門家や、支えてくれる適切な人、または機関につなげていくという方法を取ることもできます。

思春期に入ると、両親には話したくないような情緒的な葛藤も大きくなり、苦しみを歌や絵にしたり、少し歳の離れた第三者に相談したくなったりすることもあります。反対に、一人で向き合う時間が成長を促進させることもあります。

SNSで発信された子供のメッセージを単純化して受け取らず、何を求めているのかを奥行きを持って想像し、心の居場所を確保しながらも、解決の糸口を探る大人としての作法を身に着けることが大切です。

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