Aさん(20代女性)は、長年の夢だった「ダンス留学」を叶えるため、クラウドファンディングで100万円を集めて渡米しました。しかし現地での生活は想像以上に厳しく、思い描いていた海外での挑戦を続けることが難しくなります。そしてAさんは、数カ月で帰国する決断をするのです。
その後は一般企業に就職し、新たな生活をスタートさせました。ところがAさんがSNSに近況を投稿したところ、「留学はどうなった?」「これって詐欺では?」と支援者の一部から疑問の声があがり、波紋を呼んでいます。
このように、クラファンで集めた資金を使って目的を達成できなかった場合、法的な責任はどこまで生じるのでしょうか。Authense法律事務所の伊藤新さんに話を聞きました。
詐欺罪は成立しないと考えられる
ークラウドファンディングで集めた資金を、結果として当初の目的に使えなかった場合、「詐欺」に該当する可能性はありますか?
詐欺罪が成立するには、①人を欺く行為によって②支援者を誤解させ③その誤解を原因として金銭を交付させることが必要です。もし最初から留学する意思がないのに「留学する」と装って資金を集めていたのであれば、詐欺罪が成立する可能性は高くなります。
しかし、当初は本当に留学する意思があり、実際に渡航して費用も支出していた場合には、支援者を欺いていたとはいえないため、詐欺罪は成立しないと考えられます。
ー計画変更や途中断念があった場合、支援者への「返金義務」はどこまで求められるのでしょうか?
サービスの多くでは、プロジェクト成立後は約束したリターンを履行する義務があり、履行できない場合は返金義務が定められている場合があります。
クラウドファンディングには、方式として「All-or-Nothing」と「All-In」、「寄付型」と「購入型」があります。留学費用は、1円でも集まればプロジェクトが成立し、リターンを提供すればよい「All-In方式」かつ「寄付型」で行われることが多いと考えられます。この場合、途中断念であっても、約束したリターンを提供していれば返金義務は生じないケースが一般的です。
ただし、計画内容を大きく変更した場合には、契約の前提が変わるため返金義務が生じる可能性があります。
ー同様のトラブルを避けるため、プロジェクト主は事前にどのような注意書き・仕組みを設けておくべきでしょうか?
語学力やダンス歴といったプロジェクト主の情報を正確に記載し、留学生活のスケジュール概要も示しておくといいでしょう。支援者が「計画を完遂できるか」を判断しやすくなり、トラブルの予防につながると考えられます。
ーこのようなクラウドファンディングに関わる実際のトラブルはどのようなものがありますか?
とある医学生が、研究のための海外留学費などを支援するプロジェクトに参加したものの、留学後に当初の研究範囲と異なる科の医師となっていたことで、問題視されたケースはSNS上で話題になりました。
その他、購入型のクラウドファンディングで、リターンとして提供された物品が不良品であり、支援の対価として不適切であるとなったものがあります。
◆伊藤新(いとう・あらた)弁護士/Authense法律事務所
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の顧問業務や金融関連訴訟対応を中心に、スタートアップ支援や企業法務にも注力。依頼者の意向に真摯に寄り添い、分かりやすい説明とスピード感ある対応をモットーとしている。