「連れ出す大人」「ついて行く子供」 誘拐家出事件における心理の相違点

犯罪心理の観点から再発防止を考える

中村 大輔 中村 大輔
栃木県小山市内から大阪へ向けて移送される伊藤仁士容疑者=24日午前(提供・共同通信社)
栃木県小山市内から大阪へ向けて移送される伊藤仁士容疑者=24日午前(提供・共同通信社)

SNSを利用した子供への誘拐や誘い出す事件が相次いでいます。こうした事件が起きると、「下心があったのではないか」、「家出への気持ちを利用した支配欲」など様々な憶測がなされます。

建物や車への“誘拐”という形になっていなくても、街や公園で子供に声をかけて「話をしよう」「手を繋ごう」といった“声掛け事案”としても同様の事件は多数起きています。

子供たちに声をかけて連れ出そうとする大人の心理は一体どのようなものなのでしょうか。

小学生に声をかけて逮捕されたある加害者は、「かわいいと思った」「話し相手が欲しかった」と語ります。また中学生に声をかけた加害者は「中学生までは楽しかった。あの頃に戻りたかった」などといいます。

過去に焦がれる衝動に駆られている

“子供の頃を思い出して懐かしむ”という経験は珍しくはありませんが、関わりのなかった子供に声を掛けてしまう背景には、自分の心が少年期のまま留まっており、現実的に将来を展望するよりも、過去に焦がれる衝動に駆られているからと考えることができます。

過去の思い出は、現在を生きる励みにもなりますが、過去に縛られてしまうと、現在を打開する力が湧いてこず、思い出の中に浸り続けてしまいます。

こうした状況における心理教育としては、過去の葛藤や思い出を整理し、本来成し遂げたかった願望に気づき、「今の自分が自分である」という実感を持てるまで向き合っていく必要があります。

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