11月17日から行方不明となっていた大阪市の小学6年女児(12)が23日に栃木県小山市で保護され、大阪府警が同日、小山市の自称派遣社員、伊藤仁士容疑者(35)を未成年者誘拐の疑いで逮捕したことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は25日、当サイトの取材に対し、少女を対象とした容疑者の心理や、別に見つかった15歳の女子中学生の存在から、今回の事件を未然に防げた可能性を指摘した。
伊藤容疑者が逮捕前の調べに「SNSで助けを求めていた子を助けてあげた。正しいことをした」という趣旨の説明をしていたことが25日、捜査関係者への取材で分かった。小川氏は「その考え方はまったく間違っているが、本人的にはそういう意識であった可能性も否定できない。悩みの相談を受け、学校が面白くないとか、親御さんに怒られたとかいう子どもさんの逃げ口になろうとしていたのではないか。ただ、公開捜査されていることも連日の報道も知っており、スマホや靴を取りあげたりし逃げれないようにしていたことも事実であり、この話が通用しないということも本人は分かっていたはず」と分析した。
また、同容疑者が中学時代の卒業文集に「弱い人間の力になれる優しい人になる」と書いていたことも報じられた。小川氏「そういう意識はあったのだと思います。(連れ去った)方法は間違っているわけですが…。人とのコミュニケーションがなく、一般常識が欠落している部分が多大にあると思います」と推測した。
女児は行方不明になる2~3日前に伊藤容疑者と会う約束をして大阪市内から小山市まで在来線で約10時間をかけて一緒に移動。だが、同容疑者の自宅に行くと様子が変わり、「鉄砲の弾のようなものを見せられて怖かった」と話しているという。小川氏は「スマートフォンを取り上げられ、靴を隠されているという状況で簡単に外には出られず、そして恐怖心を与えて、逃げられない状況になっていたと考えられる」と解説した。
一方、今年6月に行方不明届が出されていた茨城県に住む15歳の女子中学生が伊藤容疑者の自宅で同居していたことも今回の事件で発覚した。女子中学生の部屋から伊藤容疑者の電話番号が判明し、7月に警察官が同容疑者を訪ねて任意で事情を聴き、本人立ち合いで自宅を調べたが見つからなかったという。小川氏は「ここが大きなポイントだと思います」と指摘した。
同氏は「慎重に内偵捜査を進めるべきだった。SNSの履歴を確認し、容疑者の尾行や行動確認をすれば食事が1人分なのか2人分なのか、いろんなことか分かったはず。今は誘拐事件や監禁事件に対応するための特殊なチームもありますし、壁越しに部屋の中の音を聞くこともできる。部屋の中を見せてもらうのは任意のガサで、細かい所までは見ることはできませんので、家宅捜索令状を取ってから行くとか、警察に呼んで任意に事情を聴くなど、7月の時点でもう少し突っ込んで捜査していれば今回の大阪の事件はなかったのではと思います」と後手に回った捜査に苦言を呈した。
小川氏は「今のところ、2人を連れ去っている。しかも、かなり巧妙に連れ去っていることを考えると、この2件だけなのかという感じがしてならない」と余罪のある可能性を付け加えた。