昨年父が亡くなり、残された家族が行わなければならない手続きの大変さに直面した。父の遺産相続、母が独りで住み続けることになった市営住宅の名義変更、遺族年金の請求など…。手続きに次ぐ手続きの中で、マイナンバーがまったく活用されていない現実に愕然とした。いささか愚痴っぽい内容かもしれないが、「手続きがもっと簡潔に効率よく進むようになってほしい」との思いを込めて、気になったことをまとめたい。
遺産相続からスタートして市営住宅の名義変更、そして遺族年金の請求と、すべての手続きが終わるまでに3カ月ほどの日数を要した。一連の手続き書類を作成する際に何が面倒なのかを一言で言い表すと「同じことを何度も書かされること」だ。記入する内容に重複が多すぎる。
どんな書類にもほぼ共通している記入事項は氏名・住所・生年月日・電話番号で、提出先によってはほかに死亡年月日・年金番号・続柄・金融機関の口座情報が加わる。それを書類ごとに、いちいち書かねばならない。なぜそうなってしまうのか理由は明らかで、書類ごとにフォーマットが異なるからだ。同じ役所へ提出するのであれば、書類の名目が異なっても記入欄が同じ位置(たとえばA4サイズの左上など)になるようにフォーマットを整理して、カーボンで複写すれば1回の記入で済むはずだ。
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相続も遺族年金も、ひととおり手続きが済んで落ち着いた頃、区役所から1通の封書が届いた。開けてみると「後期高齢者医療保険料還付通知書」という書類で、上半分が「納めた金額」と「返される金額」の内訳。下半分が「還付請求書兼口座振替申出書」になっていた。父が亡くなったことで、納め過ぎになっている保険料を返すから請求書に記入して提出しなさいという趣旨の書類である。同封されていた記入方法の説明によると、被保険人(亡父)と入金先口座の名義人が異なる場合は、戸籍謄本を添えて提出するように書いてあった。
そのような手続きが発生することは仕方ないが、区役所へ提出する書類を区役所へ取りに行くという、まるで冗談のような無駄を強いられることが釈然としない。しかもこの書類は、これ以降、なぜか五月雨式に毎月送られてくるようになった。何故こんなことになるのか、3回目が送られてきたときに役所へ電話をかけて問い合わせてみた。
「まだ続くのですか?」
「還付が発生している月数分あります」
「いっぺんに計算して、合算できないの?」
「月ごとに計算しますので――」
毎月続くということは、戸籍謄本もその都度取らないといけないのかと尋ねたら、電話の相手は「そうなりますね」という。もっとも請求期限が2年あるから、2回目以降の分は溜めておいて、あとから一度に出せばいい。幸い、2回目に届いた請求書は提出せず、まだ手元にあった。