昨年、父が亡くなった。我が家には“そこそこ”な預貯金しかなかったので、なるべく多く手元に残すために弁護士や司法書士あるいは行政書士などの専門家には頼らず、自分で手続きをやってみた。しかし、父が残した信用組合の口座を相続する手続きは、作成する書類が多いうえに用意する書類も多い。父の郷里から戸籍謄本を取り寄せたり、印鑑登録をやり直したり、手間と時間の浪費に苛まれて、何度も心が折れそうになった。同じ金融機関でも、手続きが異なることが分かったのも驚いた。
預貯金を相続する手続きは、信用組合だけでなくゆうちょ銀行も同時期に行っていた。用意しておく書類は、戸籍謄本、附票、代表相続人である筆者の実印と印鑑登録証明書と、おおむね共通している。ゆうちょ銀行も戸惑うことが多かったが、信用組合は、一層の難物だった。
届出印とキャッシュカードは実家をいくら探しても見当たらなかったので、支店の窓口を訪れたときにその旨を告げると「紛失したことにして、相続手続きの前に紛失届と届出印の変更届をしましょう」ということで、相続手続きは紛失届の作成から始まった。ついでに証書も紛失していたが、これは相続手続きに影響しないので、「もし見つかったら廃棄しておいてください」ということで解決した。
さて、同じ金融機関でもこれほどの差があるのか、信用組合で作成する書類の多さはゆうちょ銀行の比ではなかった。ざっと列挙してみる。
〔相続人関係図〕
フォーマットは家系図そのもので、法定相続人の相関図である。我が家は母と筆者と弟の3人しかおらず、単純なのが幸いだった。
〔相続手続き依頼書(兼払戻依頼書)〕
まさに「相続手続き」そのものを依頼する書類。父の口座を廃止した後、残高を筆者の口座へ入金する手続きに必要な書類だ。
〔出資金譲渡・脱退申請書〕
出資金を父から筆者へ譲渡する手続きだと説明を受けた。
〔出資金加入申込書〕
上記の手続きを実現させるために必要な手続きで、事実上の「新規口座の開設」となる。
〔配当金支払通知書(兼領収書)紛失届・領収書〕
筆者の不勉強で信用組合の仕組みをよく知らず、信用組合には配当金(微々たる金額だが)があることを、この手続きで初めて知った。配当金を自動的に口座へ振り込む手続きである。
父の実印登録が抹消…母が使える実印がなくなっていた
これらの書類をひとつひとつ記入していて気づいたのは、すべての書類に必ず筆者の氏名と住所を記入させる。ならばフォーマットを整理して記入欄を同じ位置に揃えて、複写出来るようにしておけば、重ねて1回の記入で済むのではないか。これは役所で戸籍謄本や印鑑登録証明書を請求するときにも感じたことである。
そんな疑問を覚えながら書類を書き終えて、最後にハンコを押す。相続人関係図と相続手続き依頼書(兼払戻依頼書)には実印が必要で、とくに相続人関係図には名前の下にそれぞれ個人の実印を押す。
ところが、ここへきて不備が発覚する。母の実印がないのである。父が生きているときは父名義の実印で用が足りたが、死亡届を提出したときに実印登録が抹消されている。だから母の実印として登録しなおさなければならない。これは迂闊だった。