父亡き後の煩雑な手続き…新たな難敵は「遺族年金」 書類の記入項目は重複だらけ、抵抗を試みると…

平藤 清刀 平藤 清刀

父の葬儀を済ませ、遺産相続の手続き書類をゆうちょ銀行と信用組合へ提出した頃、母が独りで住むことになった市営住宅の名義変更手続きが発生。書類に次ぐ書類の山に辟易しながらも、やっとの思いで片づけた。これでもう書類から解放されると思っていたら、今度は遺族年金の請求手続きが待ち受けていた。

遺族年金を受給するにあって細かい条件が設定されているが、ここでは割愛する。要するに母は、遺族年金を受給できる条件を満たしていたということ。

いまは便利になったもので、どの手続きにどんな書類を用意すればいいのか、検索したらすぐに分かる。そして念のために、年金事務所に電話かけて確認してみると、遺産相続の手続きと同じく戸籍謄本は必須アイテムだった。それに加えて年金関連の書類も必要で、諸々合わせると内訳は次のとおりである。

■戸籍関連
戸籍謄本、住民票
■年金関連
年金手帳、年金証書
■その他
請求者名義の預金通帳、所得証明書、死亡診断書、認印

母の委任状も必要だった。たとえ家族でも「本人ではない人」が手続きをする場合は、その都度、委任状を求められるのがいちばん面倒だった。

これらの書類を引っ提げて、隣の区にある年金事務所を訪ねる。応対に出てきた女性スタッフがいうには、「遺族年金につきましては、後日こちらから請求のご案内をお出しするのですが、お急ぎでしょうか」。べつに急いではいない。でも、気になったので訊いてみた。

「その通知は、いつ届くのですか」

「死亡届が区役所で受理されてから3カ月くらいです」

「3カ月も!?」

未だにそんな機動性の悪い事務をやっているのかと呆れた。いまではコンビニにある端末からマイナンバーを入力すれば、戸籍謄本や住民票を取れるサービスがある。ということは個人番号(マイナンバー)で戸籍情報にアクセスできるということだ。そんな便利なシステムが、役所間の事務処理に活用されていないのか? 3カ月もかかる理由を尋ねてみたけれど、「んー、そうですね……」と言葉を濁すだけで明確に答えてもらえなかった。

窓口で吠えても仕方がないので、手続きを進めることにした。窓口で渡されたのは「年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)〔遺族基礎年金・特例遺族年金・遺族厚生年金〕」という長い標題が付いた書類だった。二つ折り中綴じになっていて、表紙を除けば中身が9ページもある。

その中に1か所だけ、母がどうしても自ら名前を手書きしなければならない欄があった。そのため、手続きはこの日で完結することができず、いったん持ち帰ることになった。こちらが用意してきた書類を預かってもらい、その足で実家へ走る。

母は「手が震えて書かれへん」と渋ったが、本音は面倒臭がっているのが分かっている。念のために、年金事務所で「字は震えていてもいいです」と言質を取ってあるから、とにかく書いてもらう。

そのあと自宅へ戻ってから、あらためて書類を広げて考えた。この書類の記入欄は、いささか無駄が多いのではないか。

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