「奈良国立博物館」(奈良市)で10月26日からスタートした『第71回 正倉院展』。それに先立ち25日におこなわれた内覧会には、海外からの留学生など多くの招待客が訪れ、聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物の数々を楽しんだ。
展示された代表的な宝物のひとつ、教科書でもなじみのある『鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)』。盛唐の風俗を反映したふくよかな天平美人が描かれ、20年ぶりに6扇(せん)そろって公開されている。
内覧会では、この絵から抜け出てきたような美しい唐の衣装を身にまとった中国人留学生リュウ・イウンさん(24歳)が注目を集めた。上海から来たリュウさんは、「中国で漢服を着るブームがあって、今回の絵(鳥毛立女屏風)の衣装と同じだと思い、当時の化粧をして着てきました」と話す。
リュウさんは、「奈良女子大学」の武藤康弘教授が連れて来た8カ国の留学生のうちのひとり。武藤教授は2011年頃から毎年、華やかな自国の民族衣装を身に着けた留学生たちを内覧会へ連れてきており、国際色豊かな正倉院宝物に、彩を添えてくれている。
奈良市内から内覧会に訪れた野田さん(60代女性)は、『鳥毛立女屏風』第6扇に描かれた女性のようにリュウさんがショールを巻く姿を見て、「今回は大物が多く、いつもより見ごたえがあった。そんななか、彼女(リュウさん)が音声ガイドの説明と同じような化粧をして、視覚的にシルクロードを感じさせてくれた。来て良かった」と笑顔を見せた。
武藤教授から事前に学んで内覧会を訪れているという留学生たち。ルーマニア人の留学生カリン・パウラさん(23歳)は、「身近にあるほうきや鏡がどうやって儀式に使われるのか想像しにくい」と不思議そうに宝物を見るなど、各国それぞれの視点で楽しんだようだ。