「泊まれ」ってマジカ…奈良の観光ポスターが切なすぎる

広畑 千春 広畑 千春
 奈良市観光協会広報企画課グループリーダーの胎中謙吾さん
 奈良市観光協会広報企画課グループリーダーの胎中謙吾さん

 「止まれ」ならぬ「泊まれ」の道路標示の向こうで、ビートルズの名盤アビイ・ロードのジャケットよろしく、悠々と横断歩道を渡るシカたち。「日帰りなんてマジカ」と題された奈良市観光協会のポスターが、ネット民たちの心をわしづかみにしている。

 大阪・梅田駅に貼られたポスターを見た人たちは「切実過ぎてさすがに笑ってしまった」とツイート。そのほかにも「このシカ、ビートルズのファン?」「泊まります!」などリツイートが続々。「ホテルやいい店が少ない」「大阪や京都から30分の距離じゃ難しい」との厳しい指摘もあり、同協会は「最近は町家を改装したオシャレな店や、ホテルも増えてます!近いからシカたないなんて、言わないで!」と訴えている。

 ポスターは、同協会が2016年末に制作した。「当時、横断歩道を渡るシカが話題になってまして、それを使わない手はない、と起用が決まりました」と広報企画課グループリーダーの胎中謙吾さん(35)は言う。

 奈良県では外国人観光客がこの10年で約4倍に増え、2017年の観光客数も約1631万4千人と右肩上がりを続ける。だが、宿泊者はというと、約108万人で1割にも満たず、京都や大阪に泊まり、奈良は日帰りで-という人が多いという。

 「なんとか、宿泊して欲しい」と訴える胎中さんらに制作会社のスタッフは「それなら、どストレートに行きましょう」とアドバイス。興福寺と国立博物館の間、大仏殿に向かうメーンストリートにある横断歩道の写真を撮り「止まれ」を「泊まれ」と書き換えた。もちろん、画像を加工して、だ。さらにインスタやツイッター受けを目論み、ハッシュタグもこだわった。

通常は、名勝や美しい季節を題材にすることが多い観光誘致ポスターでは異色で「挑戦だった」と胎中さん。大小500枚を印刷し、旅行会社や学校などへPRで手渡した。今回ツイッターに投稿されたのは、「先日、大阪メトロにキャンペーンの一環でお渡ししたものでは」とし「まさか、こんなに話題になるなんて」とホクホク顔だ。

 ポスターは残りわずかだが、反響が続くようなら増刷も考えるという。ちなみに奈良生まれ奈良育ちの胎中さんによれば「地元民は、シカが横断歩道を渡る姿は見慣れ過ぎて、犬だけが渡る方が驚く」のだそうで、「このポスターに驚いたあなたはまだ奈良を知らない。ぜひ泊まって奥深い奈良の姿を知って下さい!」と必死だった。

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