岡山発のアートホテルがスゴすぎる! 建物のなかに「作品を置いただけ」ではない、建築家とアーティストのコラボホテルとは?

沢田 眉香子 沢田 眉香子

 客室の壁にアーティストが絵を描いたり、写真家の作品を置いたり、共用スペースでは、インスタレーション作品が展開されているような「アートホテル」が近ごろ人気で、京都のような観光地では、続々とオープンしている。

 そんななか、岡山市内にオープンしたアートホテルは、建物と空間すべてを建築家とアーティストの2人が、作品として手がけたものだ。11月24日まで開催中の「岡山芸術交流2019」開幕後、2棟のホテルがお披露目された。これはアーティストとアーキテクト(建築家)の「A&A」プロジェクトによるもので、プロデューサーは、同芸術祭も主催する公益財団法人石川文化振興財団理事長・石川康晴さん、ディレクターはギャラリストの那須太郎さん、アドバイザーは建築家の青木淳さん。今後20年かけ、岡山の歴史文化ゾーンとその周辺に作品を増やす予定。岡山を、アートを楽しみ、滞在する街にしてゆこうとする狙いだ。

 10月7日にオープンしたのは、アーティストのジョナサン・モンクと建築家・長谷川豪による「A&Aジョナサン ハセガワ」、アーティストのリアム・ギリックとマウントフジアーキテクツスタジオによる「A&Aリアム フジ」の2棟のホテル。ホテルとはいえ立派な高層建築ではなく、周囲の街並みにそぐう外観を持つ、いわば一戸建ての住宅だ。宿泊は1棟1組で、4名または6名までの利用となっている。

 アートファンなら「作品の前に布団を敷いて寝てみたい」と一度は思ったことがあるだろう。アートホテルと名乗る宿泊施設は多いが、「A&A」は宿泊して鑑賞する巨大な彫刻といっていい。ここでできるのは、アーティストのコンセプトを、視覚だけでなく身体で感じるディープかつ包括的な鑑賞。他では味わえないこの体験の居心地はいかに? 写真とともにその全貌をご紹介。

 中央は古民家再生した「カフェKITSUNE」、左が「ギャラリー出石」。ジョナサン・モンクと長谷川豪による「A&Aジョナサン ハセガワ」のチェックインはここでおこなう。

 「ギャラリー出石」では、11月24日まで「sign_tokyo」による『MASTERS OF DESIGN』展を開催。コルビュジェのユニテのオリジナル家具、岡山に名作を残した近代建築家・前川國男がデザインした家具などを展示する。

 ギャラリーのデザインも手がけたアドバイザーの青木淳さんは、「建築家の作ったハコの中に物(アート)を入れるのは簡単。A&Aは考え方から立ち上げたプロジェクトです。4年がかりでようやく2棟できました」と話す。

 宿泊棟の外観。トタン板の形のコンクリ壁、岡山の土をつかった左官仕上げによる階段といった「民家を模倣する」計算されたデザインで、街の隙間に滑り込む。

 イギリスのアーティスト、ジョナサン・モンクは「模倣」を作品に取り入れる。椅子と階段のデザインは、ミニマルアートの作家、ソル・ルウィットの作風の引用。

 宿泊棟の吹き抜け空間は、ほとんど階段! 実はこの階段は、2つの敷地をW型に連結する構造体の一部。建築構造好きには最高の萌えポイントだが、足元には注意。

 グリッドのフレームのなかに、床、天井、壁がおさまる超ミニマルデザインの寝室が。もしミニマルアートのなかに入ってみたら、どんな感じ? アートファンのファンタジーが現実になった。

 窓の下に岡山後楽園を望む。現代建築と江戸時代の癒しのスポットが合流する。

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