両手足に麻痺(まひ)がある岩崎龍介さん(41)=岡山県倉敷市真備町川辺=が、総社市内の情景をボールペン画で100点描く「総社百景」の制作に励んでいる。ペンの持ち方を工夫して筆圧の弱さを補いながら、これまでに手がけたのは20点余。そのうちの1点が2025年度の全国公募展「第44回肢体不自由児・者の美術展」で厚生労働大臣賞に輝き、「今後の創作の大きな励みになる」と意欲を新たにする。
手足の麻痺は約10年前に負った頸椎(けいつい)損傷が原因。ボールペン画とは、18年の西日本豪雨で自宅が被災した後に2年間過ごした総社市のグループホーム「そうじゃ晴々」で出合った。洋館の写真を見ながら試しに描いた絵が施設の職業指導員・大地泰輔さん(51)の目に留まったのがきっかけだ。
右手のひらを上に向けて中指と薬指でペンを挟み、親指でペンのお尻あたりを支えながら生み出す線は繊細で実に柔らかい。ペンの角度を変えることで線の強弱を付ける。
就労支援事業所のスタッフや自身が撮影した写真をモチーフに22年から「百景」に挑戦。これまでに備中国分寺五重塔や鬼ノ城といった名所旧跡をはじめ、JR総社駅、高梁川の井堰(いせき)や橋、石仏群などを描いてきた。大地さんは「自ら工夫して細部まで描き込めるようになり、個性が出てきた」と、この3年の“進化”を認める。
社会福祉法人・日本肢体不自由児協会主催の公募展に出品した「総社百景『伯備線 清音駅』」は、駅前の店舗や後ろの山を切り取った、のどかな日常が伝わる作品で、176点の応募があった絵画部門で栄誉をつかんだ。昨年12月3日に東京芸術劇場で行われた表彰式では「(同席した)母親が一番喜んでいた」と岩崎さんは笑顔で振り返る。
現在、自宅から週2回、総社市の事業所に通い、工賃を得ながら制作に当たる。新たな生きがいを見つけ「あと何年かかるか分からないけど、百景達成までやり抜く」と決意する。