中川周士(以下、中川)「桶屋は、最盛期には京都に250軒あったんですが、それが4軒にまで減りました。自分は桶にデザイン性をもたせたシャンパンクーラー、三角やしずく型の桶なども作りました。たくさん作ってひとつでも残れば、そこに桶の未来があると思う」
八木隆裕(左、以下八木)「このホテルのように、工芸品を実際に試せる場所があるのはとてもいいことだと思う。感覚を経験で伝える。そして価値をきちんと伝えていくことで、つながってゆくと思う」
小菅達之(右、以下小菅)「伝統工芸といっても生活の道具だから、変わっていく世界にどう応じていくか?ということも大切ですよね」
中川「GO-ONのように、プロダクトデザイナーと新しいものをつくっていく仕事は、自分にない発想を得ることができるので面白い。たとえば、桶をつかった椅子、箍(たが)を1本にするデザイン。コラボ相手が伝統工芸に無知ゆえの(笑)無理が、自分の領域を広げてくれるということがあります。700年続いてきた桶に、まだ伸びしろがあったのか! と…で、ついつい面白いものばっかりつくってしまうんですが(笑)」
小菅「中川さんはクラフトマンでうらやましい。僕は売場も考えながら、プロダクトのプランニングをするという立場なので。面白いことをやっても、売れないことも多いから(笑)」
中川「用途のあるものは、国境や宗教を超えて世界を平和につなぐと思うし、それをつくることで、技術をつなげていくこともできる。こうやって、異業種の次世代が横のつながりでコラボできるのは、ありがたい」
八木「AIの時代になっても、『気持ちのいいこと』というのは、自分たち人間が、最後に感じたいと思うことでもあるんじゃないか。工芸で、それを伝えていきたい」
トークイベントでは、檜の削り屑とライムの香りのデトックスウォーターが振る舞われた。これぞ五感で味わう伝統工芸。今後、伝統工芸の世界も世代交代がおこなわれ、まだまだ新たな発想やプロダクトが生まれる予感がする。
『GO-ON』 https://www.go-on-project.com/jp/
「びわ湖花街道」 https://www.hanakaido.co.jp/