携帯電話販売のルールを一新する改正電気通信事業法が10月から施行されるのにあわせて、大手通信キャリアからあらたな割引施策が発表されています。広告などではスマートフォンを「最大半額」で購入できるとうたうキャリアもありますが、ユーザーの利便性を損なうのではないかとの懸念もあるようです。ITジャーナリストの三上洋氏に聞きました。
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改正電気通信事業法では、 通信契約を前提にした端末割引の金額は2万円までに制限され、高額な最新スマートフォン端末が買いにくくなるのではないかといわれています。そこで、大手通信キャリアは、なんとかして端末を割り引くプログラムを発表しています。指定された機種の端末を分割払いで購入し、一定期間後に端末を返却すると、それ以降の支払いが免除されるというような内容です。
・ドコモ「スマホおかえしプログラム」 指定機種を36回払いで購入・端末を25カ月目以降に返却することで、最大3分の1の金額を免除
・au「アップグレードプログラムDX」/ソフトバンク「半額サポート+」 指定機種を48回払いで購入・端末を25カ月以降に返却し、あらたに指定機種を購入することで、最大半額の金額を免除
一見、割引金額だけを見ると、ドコモよりau、ソフトバンクのほうがメリットが高そうです。しかし、au、ソフトバンクのプランには大きな問題点があります。それは最大半額の免除を受ける条件として、「あらたに指定機種を購入」する必要があることです。
つまり、割引を受けるためには2年後も同じキャリアから端末を購入せざるをえません。これまでは通信回線の契約によってユーザーを縛っていましたが、今後は端末による縛りが始まったような状態です。今後の選択肢に大きな制約が生まれるため、私はこれらのプログラムは使わないほうがよいと呼びかけています。
au、ソフトバンクのプログラムでは、自社の通信契約にかかわらず端末購入のサポートが受けられるとしていますが、事実上他社の回線を使うのが難しくなっていることも問題になっています。例えば、購入してから100日間はSIMロックがかけられていたり、特別なプランに入ることが義務付けられており、顧客の囲い込みになるのではないかと言われています。
また9月26日には消費者庁が、上記2社がうたっている「最大半額割引」の広告について、「消費者が不利益を被る可能性がある」として注意喚起も行いました。割引プログラムの適用には端末代とは別に利用料が必要で、返却時に端末が破損していた場合は別途支払いが求められることもあるといい、実質負担が広告の内容とは異なることなどを指摘しています。
注意喚起を受けて、両社は現在の広告を停止し、プログラムの名称の変更も検討するとしていますが、いずれにせよわかりにくい制度で、ユーザー本位のサービスではないことが露呈しているように思われます。
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なお、忘れてはならないのは、もともとスマホ端末の価格は高額なもので、これまでも誰かが費用を負担してきたということです。これまで私たちは通信キャリアに高い通信費を払うかわりに、端末の購入の割引を受けてきました。法改正を受けて変更された各キャリアの通信料金を見ると、(政府の呼びかけている4割までには届きませんでしたが)従来と比較して2~3割程度は安くなっています。
iPhoneの最新機種などであれば中古でも高く転売することができます。わざわざキャリアの特殊なプランを使わなくても、定価でアップルストアから購入し、自分で転売したほうが、お得になるケースもありえます。ひんぱんに買い換えることを必要としていなかったり、同じ機種を大切に持ち続けたかったりする人もいるでしょう。携帯端末が安く購入できる時代ではなくなったことをふまえて、利用者側でもライフスタイルにあった携帯電話との「付き合い方」を考えていくことが大切でしょう。