獣医師になって半年後、自分の飼い猫が担当患者に…治る見込みのない「慢性腎不全」だった

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

ところが、勉強してわかったのは、『猫の慢性腎不全を治す方法はない』ということでした。愕然としました。猫の慢性腎不全に対する治療としてあるのは、腎臓の濾過器が壊れていく速度を遅らせることと、残っている少ない濾過器になんとか快適に1日のお仕事をしてもらうように、環境を整えることです。根本的に、壊れた濾過器を蘇らせる治療などはないのでした。そんなことを、獣医師になって動物病院に勤務して初めて、気づきました。

そうこうしている間にも、彼女は日に日に弱り、全く食べなくなりました。彼女は私にとって、獣医師になって初めて主任として担当する患者さんでした。治す方法はないけれども、とにかく何かしなくては!とそのときは思いました。出来ることは、毎日病院に連れて行って点滴をすることです。

毎日、車の助手席に彼女の入ったケージを載せて、勤務先の病院へ連れて行きました。彼女は、ヒトの膝に乗ったり抱かれたりするのが嫌いな子だったのですが、車の助手席にケージを載せて扉を開けると、彼女はやせ細った体でふらつきながら、必死で運転席の私の膝の上に乗ってくるようになりました。

そんな生活が50日くらい続いたある日、それは11月30日でした。彼女は毎日点滴をしていましたが、一口も食べていませんでしたので、ここ5日間は眼も見えなくなり、意識も混濁して、もう私の膝に乗ってくることもなくなっていました。12月になったら安楽死しよう…そう思っていた朝、痙攣が起きて、その後息を引き取りました。彼女はきっと、私の考えていることがわかって、気を遣ってくれたのではないでしょうか?最期まで気を遣わせてごめんなさい。

   ◇   ◇

先日、猫の腎臓病に「AIM製剤」が有効で近いうちに実用化されるという記事がニュースになっていましたね。このAIMというお薬は、どうやら先に述べた腎臓内の、濾過器のフィルターをお掃除して、目詰まりを除去してくれるといいます。

今の猫ブームのその先に、10数年後には腎臓病の猫が爆発的に増えるのでしょうか?…それまでに画期的な治療法が普及することを願っています。

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