獣医師になって半年後、自分の飼い猫が担当患者に…治る見込みのない「慢性腎不全」だった

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

一般的に、猫は犬よりも長生きですが、最期は慢性腎臓病(慢性間質性腎炎)から慢性腎不全に進行して亡くなることが多いです。何故そうなるのかについては、猫は他の動物よりも腎臓を酷使するので壊れやすいのでは?といわれていますが、実際にはよくわかっていません。

長い間使った機械が壊れてしまうように、動物の体内にある臓器も、長い間使うと壊れていきます。具体的には、脳、心臓、肺、肝臓、消化管…などですが、特に大病もしないで長生きしてきた猫は、ほかの臓器に比べて腎臓の壊れが目立ってきます。ひとたび慢性腎不全と診断されると、残念ながらそれは『不可逆性』です。つまり、治る見込みはなく、病状は進行していくのみということです。

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実は、私の飼っていたオシキャットのメス猫も、慢性腎不全で亡くなりました。10数年前のことです。彼女は、私が獣医大学に入学した当時は9歳でした。その頃から、私は彼女に何度も言い聞かせていました。『私が獣医師になるまで、病気したらあかんよ!私が獣医師になってから病気になるんやで。私が治すから!』と。

そして、私が獣医師の国家資格をとったわずか半年後に、彼女は突然、慢性腎不全になりました。それまでは、全く病気をせずに穏やかに過ごしてきたのですが…

猫の腎臓病の経過には、いろいろなパターンがあります。急速に腎臓の機能が落ちて短期間で亡くなることもあれば、少しだけ機能が落ちて、多飲多尿となり(腎機能が落ちてくる初期には、大量に水を飲み、大量に薄い尿をするようになります。)そのままさほど悪化もせずに数年を過ごすこともあり、一概には語れません。

彼女の場合は、徐々に腎機能が低下していたのであろうことは推測しますが、突然に激しい症状がでました。ある日私が帰宅すると、いつもであれば、玄関までお迎えに来てくれるのがその日は来ず、お風呂場横の洗濯かごの中でうずくまっていました。抱き上げて二階の私の部屋に連れて行き、部屋の電気をつけると、彼女がビクッとしました。部屋の中で比較的大きな音がするたびに、彼女の体はビクビクするのでした。

翌日、勤務先の動物病院で血液検査をすると、びっくりするくらい重度の腎臓病と、それに伴う高カリウム血症でした。ビクビクしていたのは高カリウム血症が原因でした。そして、いろいろな検査をした結果、良くなる見込みのない慢性腎不全という診断を、私自身でしました。

腎臓は、体内から出る老廃物…それはもはや体にとっては毒なので、それを濾して尿に排出させる濾過器です。イメージ的には、とても小さな小さな濾過器が何十万個と腎臓の中に内蔵されていると考えてください。これらの濾過器はフィルターを交換するということができないので、加齢とともに目詰まりして次々と壊れていきます。そしてその濾過器がおよそ75%以上壊れてしまうと症状がでます。つまり、体内の老廃物を濾して尿に排出するお仕事は、実質全体の25%の濾過器で仕事を賄っているのです。稼働している濾過器が25%以下になると、24時間濾過器を稼働させても仕事を終わらせることができず、結局は体内に老廃物=毒がたまってくることになり、体がだるくなり食欲が落ちて痩せてくるのです。

私は自身の獣医師としての勉強もかねて、猫の腎臓病について深く深く勉強しました。ちょうど大阪で大きな学会があり、プログラムをみると猫の腎臓病についての最新情報のコマも複数あったので、もちろん参加して、丸1日、猫の腎臓病の勉強をいたしました。

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