甘いだけがタピオカじゃない。そんな〝逆転の発想〟で、そば・うどんチェーン店「名代 富士そば」の新宿・三光町店で限定発売された「タピオカ漬け丼」がヒット商品になっている。当初は8月後半だけの販売を見込んでいたが、好評につき、9月末まで販売が延長された。当サイトでは「これがタピオカブームの最終形態か」というテーマで取り上げた8月に続き、改めて9月に現場の声を聞いた。
8月16日の販売直後は売り上げが1日一桁と伸び悩んだが、SNSで情報が拡散し、テレビでも取り上げられたことによって、20日から1日約200食も出たという。羽生(はぶ)典史店長は「200食がずっと続くということはありませんが、その後も100食ペースで安定し、現在は80食前後。ありがたいことに、リピーターさんがいらっしゃるんですよ。3日連続で召し上がってくださった方もいてうれしかったです」と反響を明かした。
見た目はイクラなのに食べるとタピオカ。プチプチじゃなく、モチモチ。話の種として1回食べて終わりと思いきや、はまった人もいるという。
羽生店長は「店内でご提供した時に『イクラじゃん』みたいな声を耳にしますが、その後で『でも、やっぱりイクラじゃないよね』という反応に、みなさんなります。また、2人で来られて、1人は別のメニューを注文されても、『ちょっと食べさせて』とタピオカ漬けを分けてもらったり」と、来店客による〝タピ活あるある〟を描写した。
同チェーンの他店舗からも希望があり、9月1日から14日まで都内の市ヶ谷店と御茶ノ水店でも販売された。〝元祖〟である三光町店でも一時は同じ14日までと告知したが、9月いっぱいまで販売することになった。
この販売延長は同商品が想定以上に支持されたことを示すが、その背景を考えると、今回の企画で特筆されることがタピオカという食材をスイーツではなく、料理に活用したという点にあるだろう。それがうまくマッチした。羽生店長は「タピオカ、イコール甘いものという先入観がある」と指摘。その固定観念から自由だったことが開発に結び付いた。
ブームとなったドリンク入りのタピオカはシロップ漬けだが、そもそもは熱帯低木「キャッサバ」の根茎から製造したデンプンで、無味の食材だ。甘いだけでなく、しょっぱくてもOKなんじゃないか?そばのタレに漬けたっていいじゃないか。そんな発想からご飯に乗せたタピオカがおかずになった。