来たる10月5日、神戸・三宮に「神戸阪急」が誕生します。神戸っ子が慣れ親しんだ「神戸そごう」の建物はそのまま、内部を一部リニューアルして営業を開始するそう。新生「神戸阪急」は現在、再整備が進む三宮駅前と歩道橋で直結。相乗効果で神戸の玄関口に新しい活気をもたらしてくれるものと期待されています。そんな本店が神戸阪急誕生祭限定テーマカラーを初日に発表するといいます。神戸に新しい善き風が吹くことを願って作られたその色の名は『Kobe Wind Blue』。制作者であるナガサワ文具センターの竹内直行さんと神戸阪急の販促担当池上由起さんに、新色誕生へと寄せる思いについてききました。
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神戸の地で新たに神戸阪急としてオープンすることが決定した時、神戸で愛される百貨店となるために店舗と市民の間に共有できる「何か」が欲しい、と考えた、と池上さん。もともとインクが好きで「Kobe INK 物語」のファンだったこともあり、直ぐに、今までたくさんの神戸の地をインクに映してきた竹内さんにオープンを記念した誕生祭テーマカラーを作ってもらおうと思いついたといいます。
そこで店舗外観や歩道橋、二階の店舗入り口正面にあるサファーレ広場など、様々なアングルを写真に収め、竹内さんが建物に相応しいカラーをクリエイトする一助になればと持参したそう。しかし竹内さんの答えは「写真は必要ありません」。驚く池上さんに竹内さんが提示した『Kobe Wind Blue』のコンセプトとは…。
―店舗写真はいらない、と言われて驚かれたでしょう
池上さん「竹内さんは、あの場所の様子はすっかり頭に入っている、とおっしゃって。あそこは神戸・三宮のエントランスであり、神戸の山からの風と、海からの風が出合う場所であると。わたしはその“風”を色に映します、とおっしゃって…店舗のイメージではなく、この場所のイメージを色にするのだ、ということが分かったときはなるほど!と思いましたね」
竹内さん「そう言われると照れますが…形なきものをこそ色として表現したかった。風の色、ということで山の緑をも内包し海へと吹き渡る、軽やかなブルーを、と」
「陸路と海路を持ち、自身の文化を外に発信すると同時に、他所からの刺激を柔軟に受け入れてきた神戸ならではの、多重的な魅力を想起させる色にしたかった。新たな発展を神戸に運ぶ色、市内外の人に次なる神戸のイメージカラーとして受け入れてもらえれば」
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筆者も『Kobe Wind Blue』の試作品を小瓶に分けてもらい、ペンで描いてみました。フレッシュなブルーはイノセントであると同時に、ペン先にインクを溜めて筆圧をかけると、成熟を感じさせる深い青へと変化。多彩な表情が、ペン先を進める心を浮き立たせてくれます。よほど時間をかけて練った色かと思いきや、色の制作依頼から発表まではタイトなスケジュールだったといいます。
竹内さん「3月末くらいにご依頼いただいたので正味、半年あったかどうか。神戸阪急オープン時にこの色をテーマにしたアイテムを様々な作り手に制作してもらう、という企画も同時進行していました。インクの発売も同日ですので、インク本体がないまま手描きの色見本(画像参照)を各店に配って」