Prime Videoにて12月19日(金)より配信スタートとなる、Amazon MGMスタジオ製作の新ドラマシリーズ『人間標本』における狂気と美の狭間で、物語の鍵を握る芸術的才能に優れた美少年の一人、石岡翔を演じた黒崎煌代。連続テレビ小説『ブギウギ』での鮮烈な登場から2年弱、黒崎はその瑞々しい感性で着実にキャリアを重ねている。猟奇的な世界観の中で、金髪ならぬオレンジ髪で自信家の役に挑んだ彼は、名匠・廣木隆一監督の現場で何をつかんだのか――。映画への飽くなき愛と、俳優としての現在地を真摯に語った。
「好きにやっちゃって」が生んだ迷いなき怪演
作家・湊かなえが紡いだ美と狂気が交錯する戦慄のミステリーサスペンス「人間標本」を鬼才・廣木隆一監督が実写化。蝶の研究者である榊史朗教授が、息子・榊至を含む6人の少年たちを「人間標本」にしたと衝撃の告白から始まる猟奇的事件と、蝶と同じ“4原色の目”を持つ者だけが見る世界が交差する。主人公・榊史朗を演じた西島秀俊、“4原色の目”を持つ世界的アーティスト・一之瀬留美を演じた宮沢りえらベテランから、黒崎をはじめとした若手俳優たちが共演。小説を原作に、全5話で描かれるかつてない衝撃の映像体験がPrime Videoで幕を開ける。
画面の中でひときわ目を引く、鮮やかな髪色。金髪のインパクトについて触れると、黒崎は茶目っ気たっぷりに訂正を加えた。「あれは実はオレンジ髪なんです(笑)。監督やヘアメイクの方、いろいろな部署の方と話し合いながら見た目を決めていきました」。
演じた石岡翔は、不遇な境遇に縛られずダイナミックなウォールアートを得意とする、迷いを知らないエネルギッシュな青年だ。そのキャラクター性を全身全霊で体現することで、表層的な明るさの奥に潜む闇を浮き彫りにしようと試みたという。黒崎は「元気なキャラクターで、一貫してためらうことがあまりない役。それを思いっきり演じることで、裏にある暗さのようなものが皆さんに伝わればいいなと思いました」と役へのアプローチ方法を述べる。
メガホンを取ったのは、『余命1ヶ月の花嫁』(09)、『月の満ち欠け』(22)、『母性』(22)などを手掛けた廣木隆一監督。演出を細かく語るよりもテイクを重ねることで知られる巨匠だが、今回は事前の入念な準備を経て、現場では黒崎の感性を全面的に信頼する言葉が投げかけられた。
「あくまで私にはですが、現場では『好きにやっちゃいなよ』という感じでした。『やっちゃって』ですね(笑)。監督の言葉を借りて、好き放題やらせていただきました(笑)。すごく私自身のエンジンにもなりましたし、自分の中で、良い持っていき方ができたんじゃないかと思います」
市川染五郎、伊東蒼ほか、荒木飛羽、山中柔太朗、松本怜生、秋谷郁甫など同世代の俳優が集う現場は、終始穏やかな空気が流れていたという。だが、役のテンションに乗じてアドリブで仕掛けた際には、「好きにやっちゃいなよ」と言われていた廣木監督だったが、静かな、しかし確かな修正が入ったエピソードを明かす。
「みんなを驚かせてやろうと思って、アドリブで演じたことがあったのですが、監督から『しっかりもう一回』『ちゃんと戻して』と言われました。2回できるほど肝は据わっていなかったので、すぐに戻しました(笑)」。
強面のイメージもある廣木監督だが、その実、若手俳優に対しても対等に向き合う優しさがあった。そして現場では、憧れの大先輩たちとの交流も彼を刺激した。特に共演シーンのあった西島秀俊とは、意外な共通点で盛り上がったそうだ。
「夢のようでしたけど、西島さんも映画オタク気質な方だったので、映画についてのお話をしました。宮沢りえさんは本当に可愛くて最高でした。初舞台への相談をしたら、『やっちゃいなよ』と(笑)。この現場は本当にそういう方が多かったですね」
「仕事としての道具」という矜持
タイトル通り、作中には「標本」としての人体が美しくも不気味に配置される。実際にボディペイントを施し、長時間静止し続ける撮影は過酷を極めた。
「ポーズを取っている時は、息を止めて。メイク時間は大体1時間くらいかな。なかなかこだわりがあって面白かったです」
完成した映像美は、脚本を読んだ時の想像を遥かに超えていたという。3原色の世界に生きる彼にとっても、4原色の目を持つ者が見る世界が見事に具現化されていたことに感銘を受けた。そして、この作品を通して黒崎が手にした最大の収穫は、現場での精神的な在り方だった。
「現場で、うじうじするのは要らないなと学びました。翔というキャラクターが自信満々でいる姿から、『迷うのはやめよう』と思いました」
デビュー当初の無垢な状態から、経験を積むにつれて生じていた迷い。それが今作を経て、再び削ぎ落とされた感覚があるという。俳優業に対する黒崎のスタンスは、2年弱のキャリアとは思えないほど冷静で、職人的だ。
「楽しいから俳優をやっているわけではないと思うんです。『仕事としての道具』じゃないと、次に繋がらないし意味がない。芝居との距離感が近すぎると自分よがりになってしまいそうで、客観的な自分もしっかり持ちながらやっています」
映画少年から、メジャーリーグの舞台へ
そのストイックな姿勢の原点は、幼少期に触れた映画の裏側にある。役者として表に出ること以上に、ものづくりそのものへの憧れが彼をこの世界へ導いた。
「『スター・ウォーズ』の特撮メイクなどが載っている『インダストリアル・ライト&マジック』の本を父が持っていて。それを読んだ時に『映画ってやべえ』ってなったのが原体験かもしれないです」
レオナルド・ディカプリオやライアン・ゴズリング、マット・デイモン、エマ・ストーンといった海外の名優たちに影響を受け、映画という世界共通言語で作品を届けられることに喜びを感じている。
さらには、宮藤官九郎作・演出の舞台 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足…」にも挑戦中の黒崎。初めての板の上、錚々たる共演者の中に飛び込む心境を「草野球をやっているやつがいきなりメジャーリーグ行く、みたいな感じだと僕は思っているので。死力を尽くさない限りコテンパンにされるだけ。頑張ります」と意気込む。
憧れた数々の名優への思いを胸に俳優業に飛び込みつつも、しっかりと「仕事」としての矜持も持つ。これからも「たくさんの壁にぶち当たることでしょう」と言うが、迷いを捨てて突き進む黒崎の瞳には希望の光が宿っているように感じられる。
【黒崎煌代プロフィール】
くろさき・こうだい 2002年4月19日生まれ 兵庫県出身 身長175センチ 連続テレビ小説「ブギウギ」でヒロインの弟役を演じる。その他の出演作は映画「さよなら ほやマン」、「見はらし世代」など。趣味は映画鑑賞、映画を観て脚本を書き起こすこと
■『人間標本』作品概要
配信開始日:2025年12月19日(金)より世界配信開始
話数:全5話 ※一挙配信
出演クレジット:
西島秀俊
市川染五郎
伊東蒼
荒木飛羽 山中柔太朗 黒崎煌代 松本怜生 秋谷郁甫
淵上泰史 田中俊介
市川実和子 村田秀亮 河井青葉
村上淳
宮沢りえ
原作:湊かなえ 「人間標本」(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:廣木隆一
美術監修・アートディレクター:清川あさみ
製作:Amazon MGMスタジオ
コピーライト: ©2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.
作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FWX9LPYQ
★スタッフ表記
ヘアメイク:日本語:坂本志穂
英語:Shiho Sakamoto
スタイリスト:日本語:能城匠
英語:Takumi Noshiro