寿司ネタに果物ってありかも! 採算度外視「フルーツ寿し」で和歌山の果物をアピールする寿司屋

國松 珠実 國松 珠実

 「なぜフルーツ寿しを作るのか。それは紀の川市のフルーツをアピールするためです」と大将の力谷(ちかたに)昭夫さんはいう。フルーツ寿しには、穏やかな気候でおいしく育った果物を、たくさんの人に味わってもらいたいという願いが込められている。「正直、採算度外視。それにフルーツ寿しの制作は果物同士の相性や味、彩りなど、試行錯誤の連続で手間もかかります。でも悪戦苦闘する僕を、地元の人たちが一生懸命応援して盛り上げてくれる。だから作り続けることができるんです」。

 フルーツ寿し誕生のきっかけは、フルーツのまち紀の川市をアピールのため活動する「紀の川フルーツ・ツーリズム」の会合。そこである講師から「フルーツと寿司を合体させてみては」と提案された。一瞬ひるんだが「頼まれごとは試されごと」がモットーの力谷さんは「やってみます」と即答。翌日さっそく試作し、関係者に食べてもらった。「フルーツ寿しを囲んで、みんなが笑顔になる。これを目当てに、わざわざ大阪や京都から通ってくるお客さんもいる」とうれしそうに語る。

 力寿しの、もうひとつの名物は鮎寿し。近くを流れる紀の川は昔から鮎がとれ、地元の郷土料理として食されてきた。下処理後に12時間かけて炊き上げ、さらに柔らかくなった骨を包丁で丁寧に抜く。丸2日かけて完成した鮎寿しは、ほおばったとたん、優しい味わいを残しつつ口の中で鮎が溶けていく。いくらでも食べられそうだ。「骨を抜くのは先代のアイデア。他にも鮎寿しを出す店はありますが、骨まで抜く店はほぼありません」。

 話を伺う間にも、地元の鮎寿しファンから持ち帰り注文が相次いだ。力寿しのこだわりは先代から受け継いだ鮎寿しと、鰹節や昆布などで丁寧に出汁をとった吸い物。そしてシャリだ。「この3つは先代がこだわって生み出した味。今後も絶対に変えられない」と言う。

 受け継いだものを守りながら、フルーツ寿しで地元のフルーツ産業を盛り上げ、新たな客を呼び込む大将、力谷さん。「若い人にもどんどん食べに来て欲しい。ドライブデートに来てくれたらいいなあ!10台ほど入る駐車場もあるよ」と明るく語る大将に、次はどんな取組みを見せてくれるか期待してしまう。

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