銃社会の米国で波紋 ラケットを銃のように向けたテニス選手が罰金1万ドル 学校では玩具銃で出席停止に

谷口 輝世子 谷口 輝世子

 8月31日に行われた全米テニス男子ダブルス2回戦で、マイク・ブライアン(米国)がラケットを銃のように構えて審判に向けたことで、1万ドル(約106万円)の罰金が科された。

 問題の行為は第2セット12ゲームで起った。相手の打ち返したボールは「イン」と線審に判定されたが、ブライアンはチャレンジシステムを利用して、ビデオ判定を求めた。ビデオ機器によると、ボールはわずかながら「アウト」で、判定が覆った。チャレンジが成功したブライアンは、ラケットを銃に見立てて、狙いを定めるかのように、ラケットの持ち手を線審に向けたのだ。

数時間前に乱射事件 当該選手は謝罪

 ブライアンに科された1万ドルの罰金は、9月1日時点では、今大会で科された罰金のうち、最も金額が高いものである。全米テニス協会のスポークスマンは「妥当な金額だと思う」とコメント。ブライアンがライフル銃を構えるジェスチャーをした8月31日には、その数時間前にテキサス州で7人が死亡する乱射事件が起こっていた。8月3日にはテキサス州エルパソで22人が死亡する乱射事件があったばかりだ。

 ブライアンも形式的な内容ではあるが謝罪した。ニューヨーク・タイムズ紙によると、「私たちはポイントを獲得したので、遊び心でジェスチャーをした。しかし、最近の事件と政治情勢を考えると、私の行為は配慮に欠けるものだったと理解している。このようなことを二度としないと約束する」と声明を出したという。

 多くの観衆にパフォーマンスを披露するプロ選手が、審判への敬意を欠き、銃撃事件の被害者や不安におびえる人々への配慮を欠いたポーズをした。罰金1万ドルの報道に、インターネット上の米国人の反応は、「妥当な処分」、「もっと厳しいものでもよかった」というものから、「現実の銃撃よりも、ジェスチャーに怒っている人がいる」という反対意見まで様々だ。

「バブルガン」で10日間の出席停止処分

 射撃を模倣したいかなる仕草も許されるべきではないというもの極端な話だろう。 

 銃の引き金を引くとシャボン玉が出てくるおもちゃがある。「バブルガン」などと呼ばれているもので、明らかに子ども用の玩具として作られたものだ。数年前、米国ペンシルバニア州の小学校で、友達にバブルガンをして遊ぼうと友達に話しかけた女児が10日間の出席停止処分を受けた。「友達を威嚇した」という理由である。

 また、マサチューセッツ州でも5歳児が学校内でおもちゃのブロックを使って銃のようなものを作ったところ、学校から警告を受けた。再びブロックで銃を作ったら「空想上の武器」を所持したという理由で10日間の出席停止処分にするとの内容だったそうだ。

 テニス選手のライフルポーズに罰を与え、子どもにシャボン玉が出てくるおもちゃの鉄砲やブロックで銃の形を作ることは禁じることができても、実際の銃を厳しく取り締まることはできていない。米国内の銃の規制はなかなか進まない。複数の乱射事件があったテキサス州では、かねてから議論されていた銃器所持の規制を緩和する法律が発効した。

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