リアル「北の国から」 酪農一家の24年を追った映画「山懐に抱かれて」が大反響

黒川 裕生 黒川 裕生

経験を積み、自分なりの酪農を模索し始めた息子たちは、時に公雄さんと激しく衝突する。互いに涙を流しながら思いをぶつけ合う場面など、遠藤監督と吉塚家との長年の信頼関係がなければ撮れなかった映像も大きな見どころだ。

「編集していて思ったけど、公雄さんは本当に自分勝手(笑)。子供たちのことより山地酪農の実践の方が明らかに優先順位が高いんですから。子供たちには酪農をさせることしか考えていない。『北の国から』みたいとも言われましたが、あっちのお父さん(田中邦衛さん)の方がよっぽど優しいですよ」

編集する際に参考になったのは、意外にも映画「男はつらいよ」。理不尽な言動で周囲を振り回すのに、多くの人から愛される寅さんが、公雄さんに重なったという。

テレビ岩手開局50周年記念作品として、自身の手掛けた番組が初めて映画になった遠藤監督。「ダイレクトに反響をもらえる映画は、テレビとは全然違う。実は映画化には乗り気ではなかったのですが、今はやって良かったと感じています」と手応えをにじませる。

「ここには心の豊かさがある、と言うと陳腐になりますが、吉塚家の歳月からは、人間が自然の恵みで生かされているという原始的な営みを感じていただけるのではないかと思います」

シネ・ヌーヴォでの上映は9月27日まで。

関西ではこのほか、神戸の元町映画館、京都シネマでいずれも9月14日から20日まで上映予定。秋から冬にかけて、全国各地で自主上映会も続々と決まっている。

■「山懐に抱かれて」公式サイト http://www.tvi.jp/yamafutokoro/

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