いつまでも「次のカメ止め」と誤解されていたい!謎の低予算映画「みぽりん」公開迫る

黒川 裕生 黒川 裕生

全編神戸で撮影された謎のホラー映画「みぽりん」が、まだ劇場公開されていないにもかかわらず、期待値だけが上がりまくるという面白い状況になっている。インパクト十分のおどろおどろしいポスターに、「カナザワ映画祭の『期待の新人監督』で観客賞を受賞」という絶妙な実績。異様にテンションの高い予告編も評判を呼び、「これはカメ止め(『カメラを止めるな!』)のようなすごい映画なのではないか…?」と、一部の映画ファンから熱い注目を集めているのだ。監督は神戸在住の松本大樹さん(36)。映像制作会社CROCOを営む、朗らかでやけに背の高い男である。

「みぽりん」は、声優地下アイドルユニット「Oh!それミーオ!」のメンバーが、ボイストレーナーの怪しい女に六甲山の山荘に監禁されるという“ホラー映画あるある”な舞台設定の物語。制作・脚本・監督を務めた松本さんにとっては初の映画作品で、ロブ・ライナー監督の名作ホラー「ミザリー」(1990年)を徹底的に研究して脚本を書き上げたという。

「普段はアイドルのミュージックビデオやライブ、企業のPR映像などを手掛けているのですが、いつかは映画を撮りたいという思いがずっとありました。そしたら去年、低予算で作られたカメ止めが大ヒット。これに勇気づけられて、本気で作ろうと夏頃から準備を始めました」

完全に自主制作のため、やはりお金はかけられない。舞台が限定される「監禁もの」に決めたのは、制作費を切り詰めるためという理由も大きいという。

キャスティングには、松本さんが6年前に独立した頃から付き合いがある声優・俳優のマネージメント会社「澪クリエーション」(大阪市北区)が全面協力。というより、ボイストレーナー・みほを演じる垣尾麻美さん(39)を筆頭に、実は主要キャスト7人全員が同社の所属俳優である。マネージャーの露木一矢さん(48)は筋金入りのホラー映画ファンで、「今が人生のクライマックス。この先、これよりいいことなんて起こらないでしょう」と感無量のご様子。

ついでに書き添えておくと、露木さんは公式パンフレットにホラー映画に関するコラムを見開き4ページにもわたって執筆している。男・露木の檜舞台、半端ではない入れ込みようだ。

ロケ地は「ホラー映画はちょっと…」とあちこちに断られながらも松本さんが地道に交渉して回り、ライブハウス「神戸VARIT.」や六甲ケーブルなどの許可を得ることができた。また肝心の山荘は、松本さんがTwitterで「誰か貸してください」とダメ元で募集したところ、ある奇特なオーナーが快諾してくれたといい、ついに紛う方なき全編神戸ロケを成し遂げてしまった。

撮影は2018年11月から今年の1月末にかけての毎週月曜日。「時間はない。人もいない。お金もない。だから追加撮影だけは絶対にしないぞ!」を合言葉に、松本さんたちは怒涛の勢いで撮影をこなしていった。松本さん曰く、「最初の頃のぎこちない演技も全部OKにしてしまったことの反省は正直あります。しかし、カメラマンが気弱なタイプだったし、私も現場ではずっと楽しく笑っていたので、皆さん委縮せず演じることができたのではないでしょうか」とのこと。前向きだ。初めて書いた脚本もスピード感を優先するあまり「穴だらけ」の完成度で、「あちこち辻褄が合っていない部分もある」と認めながらも、「低予算B級映画への憧れが強い自分にとっては、こういうどこかが欠落した作品もおおらかな気持ちで楽しんでほしいという思いがある。上品なフランス料理みたいな映画ばかりじゃつまらないでしょ」と話す。前向きだ。

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