あおり運転傷害事件、容疑者と同乗撮影女性も「現場助勢罪」で逮捕の可能性

小川 泰平 小川 泰平
あおり運転の被害が増える中、厳しい取り締まりが求められている(naka stock.adobe.com.jpeg)
あおり運転の被害が増える中、厳しい取り締まりが求められている(naka stock.adobe.com.jpeg)

  8月10日に茨城県・常磐自動車道で発生した「あおり運転事件」で、殴られた被害者男性側のドライブレコーダーに映った映像がテレビでも公開され、理不尽な行為に怒りの声が起きている。茨城県警は16日、傷害の疑いで住所、職業不詳、宮崎文夫容疑者(43)の逮捕状を取り、全国に指名手配した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は17日、当サイトの取材に対し、同容疑者だけでなく、車に同乗して暴行現場を撮影していた女性も逮捕可能となるように「あらゆる法令を駆使すべき」と訴えた。

 常磐道で被害に遭った男性は外国製の高級車SUVにあおられて進路をふさがれて停車させられ、「殺すぞ」などと怒鳴り、言い寄る宮崎容疑者から窓越しに5発殴打され顔面から出血が認められた。その一部始終がドライブレコーダー等で撮影されており、男性は被害届を出した。また、容疑者の助手席に乗っていた女性が先に車から降りて携帯電話で撮影を始め、暴行を止めることなく、その背後から被害者が殴られる様子を撮っていた。

 小川氏は「あおり運転はまだ法整備が十分ではない。あおり運転をなくすためにも、今ある、あらゆる法令を駆使する必要がある。一般的に、あおり運転では、相手を死亡させるといったことがない限り、刑務所に行くことはなかなかないが、前科があれば、起訴されて実刑判決を受けることもある」と説明した。

 宮崎容疑者があおり運転をしていた時に乗っていた白いSUVは7月21日に神奈川県内のディーラーから代車として3日間の契約で借りていたものだったが、事件後に代理人によって返却するまで約3週間にわたって返していなかった。小川氏は「ディーラーから複数回、電話で返却を求められ、男は『いつまでに返す』と言いながら返していなかった。これは横領罪の中で『返却拒否』が適応される可能性もある」と指摘した。

 さらに、この撮影者の女性について、小川氏は「現場助勢罪として逮捕される可能性もある。現場助勢罪とは、傷害罪の行われる現場において『勢いを助けた者』に成立する犯罪です。傷害の現場で、けしかけたり、はやし立てたりする罪になる。あおり運転やその同乗者に対しても、こうして法律を積極的に解釈し、厳罰を求めていくことも必要になる」と、犯罪行為への共犯者にも厳しい目を向ける意義を説いた。

 小川氏は16日、静岡市内で宮崎容疑者と同一と思われる男のあおり運転の被害に遭った30代男性をインタビューした。この男性は「他の複数の車に対しても間に割り込んだり、幅寄せしていた。この車は変だと思って、冷静に対応したが、自分も幅寄せされたりして、相当怖かった。車間距離を30㍍くらいに保っているうちに、本人(容疑者)が左に曲がったので、まっすぐ進んだ」と難を逃れた経緯を明かした。

 宮崎容疑者の行方について、小川氏は「警察は関係者等に本人の立ち回り先を聴取したり、捜査をしている。現在使っている逃走車両、携帯電話等も調べており、逮捕は時間の問題だといえる」と指摘した。

 あおり運転から身を守るにはどうすればよいか。小川氏は「前をふさがれて路肩に止められた時でも、絶対に窓ガラスを開けないことです。警察にすぐ110番通報して自分の居場所を伝えること。同乗者がいれば110番してもらう。無理して逃げようとして、他の車と接触事故を起こすと責任を問われることもありますから、それは避けてください。ドライブレコーダーは基本的に前と後ろに設置した方がいい」と呼びかけた。

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