北神急行は神戸市営地下鉄と相互直通運転で乗り入れをしており、神戸の市街地から地下鉄に乗ったまま北神地区にたどり着く。そのため、地元でも北神急行電鉄という会社自体を知らない人も大勢いるという。「北神地区のお客様を運ぶのが我々の使命。少しでも地下鉄とは違う会社なんだということをわかっていただきたい」と戸出さん。それまで広報活動には消極的だった社内の雰囲気も、「駅長がするのなら」と前向きになってきたのだとか。
小規模な鉄道会社ならではのフットワークの軽さも活かし、地元の企業・団体とコラボイベントを次々開催するなど、「公式さん」たちの地道な努力で北神急行の知名度もじわじわと上昇。昨年冬に行われた赤十字血液センターとコラボした献血キャンペーンでは、献血者が例年より300人ほど増えたという。
そのことを聞きつけた兵庫県警からは、SNSのフォロワーも多いことから若年層への周知を狙って、薬物乱用防止キャンペーンへの協力も依頼も。このイベントの後日、「リアル北神弓子」と「戸出駅長」は神戸市の三宮駅前で薬物の恐ろしさを訴えた。
ただ、北神急行電鉄は来年中をめどに市営化されることが発表されている。そうなると現在の北神急行の路線は市営地下鉄の一部となり北神急行の名前も消える。その後、北神弓子を含め「公式さん」たちがどうなるのかは未定だ。すでに「葬式鉄」と呼ばれる鉄道ファンも谷上駅を訪れているという。
「市営化により北神急行電鉄という会社はなくなるが、路線自体は北神線として残る。少なくとも北神弓子は少しずつ育ってきているコンテンツなので使いみちはあるのではと思うのだが」神戸の街で認知され始めた「公式さん」たちの行く末は不透明だ。