これだ!鹿、鹿、鹿。鹿のコロニー。「鹿だまり」の出現である。オス鹿もメス鹿も小鹿も、足の踏み場もないほど集まっている。まさにフェス状態だ。
そこで鹿たちは、やはりのんびり草を食んだり、互いにつつき合ったり時々立ち上がって場所を変えたりと、思い思いに過ごしている。時々小鹿にねだられ、乳を与える母鹿もいる。しばらくして日が落ちると、鹿たちは博物館南側の春日大社の参道の林の方へ、ゆっくりと散っていった。
奈良国立博物館総務課の田仲裕一企画推進課係長に、話を聞いてみた。
「もうずっと以前から、毎年夏の夕方になるとこの換気口周辺に集まってきます。時間は、だいたい日没の1時間前でしょうか。換気口というのは、地面に金網をかぶせているあの穴です。換気口は他にもあるのに、なぜか集まるのは博物館入口に近いここです。冷風に当たっているという説もあると聞きますが、実はあそこからは冷風は出ていません。私たちも鹿たちが集まる理由はわかりませんが、鹿だまりは夏の風物詩のようなものです」。
この鹿だまりが見られるのは、観光客もまばらになる日没前。急な夕立などがなければ、たいてい集まるようだ。暑い季節に奈良を訪れる際は、その時間帯もスケジュールに入れ、鹿と一緒にフェスを楽しんでみてはいかがだろうか。
ちなみに、神の使いである優美な鹿を描いた『春日鹿曼荼羅』(奈良国立博物館蔵・前期)の展示がある「いのりの世界のどうぶつえん」展が、「法徳治の仏像」展とともに奈良国立博物館で9月8日(日)まで開催中。開館は18時まで、金・土曜は20時までと、鹿だまりと一緒に奈良を丸ごと楽しむのにちょうどいい。さらに9月1日は入館無料。初の試みという英語落語も開かれる。