「京アニ事件」過去に放火した元加害者が考察…犯行に至る動機は何だったのか

中村 大輔 中村 大輔
京都のアニメ会社で火災  煙を上げるアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオ=2019年7月18日午前11時36分、京都市伏見区(提供・共同通信社)
京都のアニメ会社で火災  煙を上げるアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオ=2019年7月18日午前11時36分、京都市伏見区(提供・共同通信社)

この元加害者にとって、火は特別な存在であり、心理学でも象徴的に抑圧された攻撃性として解釈されることもあります。放火の背景には憤怒、怨恨、スリル等、様々な理由が挙げられますが、いずれも感情に起因した犯行といえます。

対話からは、作品に感情移入する中で、カタルシス(浄化)を体験している様子がうかがえます。この場合、絵や小説、ゲームといった作品は、自分の見たい内容や世界であり、感情を受け止める母性的な存在といえます。

心理分析ではどんな作品が好きかを聞くだけでも、その人が何に感情を向け、葛藤しているかを垣間見ることもできます。多くの芸術作品は、人々の感情を受け止め、浄化し、希望を与えていますが、期待する結末に至らないとき、拒絶されたと感じてしまうこともあるかもしれません。

憎しみは愛情にかけていたエネルギーが転化したものと考えることもできます。ストーカーやDVも同様ですが、相手と自分との間に一方的な愛情を作り上げ、受容されなければ不安に陥り、苛立ち、支配しようと暴力的な性質を帯び始めます。

あるストーカー犯罪を行った加害者は「自分は頑張っているのに認められない」「少しでも話を聞いてほしかった」と語りました。感情を浄化できずに、視界が狭まると、周囲の声も次第に届かなくなってしまいます。

今後も様々な作品が生み出され、現実と創作が融合するような体験も広がっていくかもしませんが、一つ一つの作品に敬意を持ち、元加害者が語るように誰かに聞いてもらいながら、より一層の節度のある関わり方が今、求められているのではないでしょうか。

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