7月18日、京都アニメーションのスタジオ(京都市)で起きた放火殺人事件は、世界中に大きな衝撃と喪失感を与えました。亡くなられた方々に対し深く哀悼の意を表し、被害にあわれた方々の一日も早い回復を願っています。今後、犯行の真相も明らかになると思われますが、なぜこうした事件が起きてしまうのか、どうすれば防げるのか、放火に至る動機について、過去に放火事件を起こし、筆者の再犯防止プログラムを受けている加害者に今回の事件について尋ね、その心理を考察しました。
――京都での事件について率直にどう思いますか?
「火は私にとっては、キャンプファイヤーを眺めるように落ち着き、清めるようなイメージです。今回の事件は私とは違って燃やすことよりも、破壊行為が目的に思えます」
――破壊が目的で、火は手段であったということですか?
「はい。私は小説、アニメが好きなので、貴重な紙や原画が燃えてしまったのは残念です。紙に対して火を使うのは合理的ですね」
――つまり人や紙、作品を生み出す全てが対象であったということですね
「ただ、人の命の重さが感じられず、ゲームのように“キル”していたのかもしれません。仮説でしかありませんが、目的は空想的で、手段だけが現実的になっているように思えます」
――現実と仮想の区別がつかなくなっているということですか?
「そうですね。私はファンタジーが特に好きで、童話や小説をよく読んでいて、ハマれる作品がない時期に火を使いました。それまでは作品の中で、自分の思いは完結できていました」
――今あなたは、自身の放火についてどう思っていますか?
「火は危ないという認識が大事です。当たり前なのですが、悪い行為ということは分かっていても、人や家族や将来どうなるかとか、視界に入っていませんでした。後悔しています。誰かに自分の気持ちを聞いてもらって、一歩引くことができたならとどまっていたかもしれません」