ツンツン系の子猫を迎えて… たとえなついてくれなくても

渡辺 陽 渡辺 陽

 神奈川県のある農家が野良猫の不妊手術をしないまま、エサを与え続けていた。当然ながら産まれる子猫たち。野良猫が爆発的に増えてもおかしくないのだが、なぜか子猫たちは次々と姿を消していった。

農家でエサをもらっていた野良猫たち

 神奈川県の、ある農家でたくさんの野良猫がエサをもらっていた。母猫だけで4~5匹。エサを与えるだけで不妊手術をしないので、猫がどんどん産まれた。あっという間に猫が異様に増えるのではないかと思われたが、なぜか子猫が産まれては次々と死んでいった。保護主が知っているだけで7~8匹の子猫が亡くなったという。なかには交通事故で亡くなる猫もいた。あちらこちらで排泄するため、近隣からの苦情も絶えなかった。

 見かねた保護主は、エサを与えていた農家に猫の管理や捕獲を呼びかけたが、一向に協力は得られなかった。「息子が怒るから」「この猫は息子が気に入っているから」という言い訳をして保護させない。

 2018年5月、猫たちの捕獲は難航したが、なんとか保護できた。猫ボランティアの武田さんのところには、知り合いの人を通じてカンナちゃんという子猫が来た。

人気のある保護猫、ない保護猫

 カンナちゃんは生後2カ月になっていないくらいで、ひどい猫風邪をひいていた。まだ子猫だが、生粋の野良猫なので、武田さんにも懐くことはなかった。

  保護猫でも、里親探しは熾烈な競争だ。里親希望者は子猫を希望する人が多く、成猫はもらい手が少ない。子猫のなかでも、愛想のいい猫のほうが断然人気がある。抱っこさせてくれたり膝に登ってきてくれたり、甘え上手な子猫は、引く手あまた。保護主は、複数の希望者の中から里親を選ぶこともある。

 カンナちゃんは子猫だったが、ツンツン系で、武田さんのところに残ったまま成猫になってしまった。

 あえてツンツン系の子を迎えて

 神奈川県に住む菊池さんは、5匹の猫を飼っている猫好き家族。2019年1月に愛猫を亡くしてつらい日々を過ごしていたが、新しい子を迎えようと譲渡サイトで保護猫を探していた。

 亡くなったウタちゃんに似た感じの三毛猫のネネちゃんがいたので、その子に会うために武田さん宅を訪れたという。

 「ネネにはウタちゃんの面影があって、4歳の成猫で、抱っこもさせてくれない子でした。カンナは生後10カ月だったのですが、ネネと同じく全然触らせてくれないし、人になれていない子だったんです。でも、主人が気に入ったので、カンナも迎えることにしたんです」

 他の猫が甘えてくれるので、ツンツン系の猫がいてもいいと2匹を選んだ菊池さん。3月に2匹を迎えてから2カ月経つが、やっと少しずつ慣れてきて、そっとなでられるくらいになってきた。

 「ご飯もちゃんと食べているし、数年後になついてくれたらいいなと思っています」と、菊池さんは言う。

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