菅田将暉主演で2019年1月期に放送された異色の学園ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』では、生徒役の若手俳優たちにも注目が集まった。その中の一人、望月歩(18)が『五億円のじんせい』(公開中)で映画初主演を飾る。善意の募金5億円により心臓手術を行い、一命をとりとめた過去を持つ高校生・高月望来役。オーディションで主役の座を射止めた。
「主演するかどうかも決まっていない段階から、自分だったらどうやって演じるか?とワクワクしていたので、オーディション合格の知らせを聞いたときは、自分の考えを形にできる!と本当に嬉しかった。映画主演も初めてですから、言葉にできない喜びがありました」と起用決定の瞬間を振り返るが、そこはやはり10代。「決まった瞬間、嬉しくて部屋のベッドで飛び跳ねちゃいました」と無邪気だ。
そんな無邪気もつかの間、冷静な母親からの一言にハッとする。「言われたのは『ここからは良くも悪くも君次第だよ』と。…確かにそうですよね。そこから意識が切り替わったというか、役作りの日々に突入しました。どんなに調べても、準備不足ではないか?という気持ちが常にあって、脚本を持つ手がプルプルと震えているときもありました」。
その追い込みが功を奏した。「撮影が始まってみたら、緊張感よりもワクワクが勝った。もの凄く準備をした、という自負がそうさせたのかもしれません。これからどんなことを見せていこうか、という感情が強くあって。撮影初日の前日もグッスリ眠れました」と備えあれば憂いなしを体感。
撮影期間は約3週間という短いスケジュール。しかも主演だから出ずっぱり。「色々な方と一対一でお芝居をすることができて、すべてが貴重な経験。撮影での苦労はほとんどありません」と若さで乗り切った。ただどうしても“若さ”だけでは乗り越えられない壁もあった。それは“早起き”という壁。「撮影期間は家に帰ったらベッドに倒れ込む毎日。元々早起きは得意な方ではないので、朝起きるのがきつかったですね。お母さんに起こしてもらうことで、なんとか遅刻せずにすみました」と照れ笑い。
望月にとって「これまでの経験の中で、撮影が終わって役と別れるのが一番寂しい作品」になった。「完成した作品を早く観たい!」という高まる気持ちの反面、冷静な気持ちで観ることのできない自分もいた。完成作品の第一印象は「自分が映っているのが気持ち悪い!」で「例えば録音した自分の声を聴いて“なにこの変な声!?”と感じるのと同じ。どの作品もそうですが、自分が出ているところは気持ち悪いなぁと思ってしまう。ほかの方が出ているシーンは凄くいい!と感じるけれど、自分の出番は…まだ見慣れません」と頭をかく。
しかも最初で最後の“初”主演映画。名刺代わりにもなるわけで。撮影中に感じたワクワクは影を潜め、あのプルプルが戻ってきた。「公開が近づいてきて緊張感が蘇ってきました。観て下さる方がどれだけいて、どのような評価が下されるのか。その緊張感が今は凄い」と襟を正す。『良くも悪くも君次第』。望月はあらためてその言葉を噛みしめている。