クラブカルチャーと食の情報発信基地として、国内外の著名なミュージシャンや音楽ファンから絶大な信頼を集めてきた神戸・三宮のクラブ「troopcafe」が、6月末で現店舗での営業を終える。2004年に現在のビルに入居したが、近年は老朽化による漏水などのトラブルに悩まされていたという。社長の若林裕薫さんは「場所にこだわるのではなく、私たちは音楽と食にこだわりたい」と今春、ついに退去を決断。7月以降は、地元の音楽関係者らと業務提携を図りながら、移転先を探していく。
troopcafeは1998年、三宮の今とは違う場所で開業。大好きな音楽を仕事にしようと、若林さんが30歳の時に脱サラして始めた。ヨーロッパの旬なダンスミュージックを中心に展開してきたほか、世界的なシェフによるワークショップ、神戸のナイトカルチャーを考えるシンポジウムなども開催し、20年以上にわたって神戸の夜を盛り上げてきた。
石野卓球や寺田創一、KO KIMURA、DJ SODEYAMAら国内の名だたるDJはもちろん、Jeff Millsやグラミー賞アーティストのQuestlove、Dubfireら海外の著名な音楽家らともコネクションを築き、積極的に招聘。来日した際には、スタッフが灘の酒蔵や有馬温泉、長田のぼっかけなど、神戸の観光とグルメを徹底的にアテンドすることで、神戸ファン、troopcafeファンを着実に増やしてきた。「今でも毎日のように海の向こうから『出演したい』とメールが来たり、音源が届いたりしている」と若林さんは語る。
だが一方で、ここ数年は、防音処理を施した天井からの漏水が深刻な事態に。急遽別の会場を借りたり、何日もイベントができない状況が続いたりしたこともあるという。若林さんは「神戸の文化拠点を残そうとスタッフ全員で歯を食いしばってきたが、ゲリラ豪雨や台風など今後のリスクを考えると、新しい活動形態を見つけた方が健全だしポジティブではないか、と考えを改めた」と明かす。
5月末、一旦営業終了することをfacebookで報告したところ、大きな反響があった。「手紙やプレゼントをくれた人や、泣いてくれた人もいて、胸がいっぱいになった」と若林さん。「お客さん同士で結婚したカップルも、把握しているだけで50組以上いる。卓球さんがDJをしている前でプロポーズした人もいた」と笑って振り返る。それほど多くの人に愛されてきただけに、閉業の告知は衝撃をもって受け止められたようだ。
ただ、クラブという「ハコ」はなくなるが、これでtroopcafeがなくなるわけではない。今後は「ハコがない」ことによる機動力を逆に生かして、野外フェスやウェアハウスパーティーなどの音楽イベント企画、制作も手掛けていくという。若林さんは「神戸の夜はこれからもっと面白くなる。これまでtroopcafeとして培ってきた音楽と食に関するノウハウで、その流れを後押ししたい」と力を込める。
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troopcafeの現店舗での営業は6月30日が最後。最終日は「Last Dance For Beginning」と題して15時から23時59分まで、入場無料のパーティーを予定している。また28日にはtroopcafeと縁の深い石野卓球がDJとして登場するイベントもある。
https://troopcafe.jp/