「さすがロシア」
「総領事館のクラブ化決定!」
4月下旬、そんな怪しげな情報がfacebookを駆け巡った。そこには「Clubソビエトat在大阪ロシア連邦総領事館」なる謎めいたイベント名が記され、「7/27(土)の午後」「ソビエト・ロシア好きな方もそうでない方も、映画音楽とお食事で大いに盛り上がりましょう!」「『大阪のロシア』である領事館に足を踏み入れていただける機会」などと呼び掛けていた。「総領事館」と「クラブイベント」という意表を突く組み合わせにネット界隈は騒然。5月12日に参加受け付けが始まると、わずか1時間ほどで120枚が完売してしまったという。主催者は「関西ソビエト文化サロン実行委員会」という組織(?)らしいのだが、一体どういう人たちなのか。
神戸・元町にある大丸神戸店の向かい、細長いビルの5階。レコードや音楽関連本、機材などが並ぶ音楽室「フォノテーク」にその人たちはいた。古池麻衣子さんと、安井麻人さん。いずれも神戸在住で、古池さんは会社員、安井さんは作曲やDJ、ラジオパーソナリティーとして活動する音楽家だ。
発起人で実行委員長を務めるのは、大のロシア好きという古池さん。5年前に旅行で初めてロシアを訪れ、人の温かさと街並みの美しさ、そして料理のおいしさに感動。それ以来、すっかりロシアの虜になり、年に数回は必ず旅行するほどになったという。
ビザ申請のため、大阪府豊中市にある在大阪ロシア連邦総領事館に何度も足を運ぶうち、古池さんはここで時々クラシック音楽のコンサートやロシア料理を楽しむ交流会が開かれていることを知る。次第に「自分でもやってみたい」と思うようになり、1年前、ロシア出身の知り合いを通じて総領事館とコンタクトを取った。
「でも当時は仕事を辞めたばかりで何か組織に属しているわけではなく、社会的な実績も何もない一人の日本人でしかなかった」と古池さん。最初に総領事館を訪ねたときも、担当者から「あなたはどなたですか」「なぜイベントを企画したいのですか」と、やや突っぱねるような質問を投げ掛けられ、あまり友好的な雰囲気ではなかったそうだ。しかし古池さんは負けない。自分なりの「ロシア愛」を熱く語って信用を勝ち取り、開催の許可をもらうことができた。「ロシアが好きなのだというその気持ちをしっかり受け止め、受け入れてくれた。さすがロシア」と古池さんは感謝する。担当者からは後日、「何か新しいことをやってくれそうな麻衣子さんに任せてみようと思った」と伝えられたという。