固くて無機質な「はしご」をモチーフにしたストールに、スーパーのレジ袋から着想したワンピース…。アイデアは奇抜なのに、街にそのまま着て行っても違和感のない、絶妙のデザインとナチュラルさで、いま世界的に話題を集めるファッションデザイナー濱田明日香さんの個展が、神戸で開かれています。ワークショップでは子どもと一緒に、布に自由に穴を開けて服を作る楽しそうな姿も。濱田さんが服や服づくりに込める思いを、聞きました。
濱田さんは兵庫県宝塚市出身。高校卒業後、京都市芸術大学の染織科へ。カナダ留学後、アパレル企画に携わったのを機にロンドンで服作りを本格的に学び、在学中にオリジナルレーベル「THERIACA(テリアカ=万能解毒薬の意)」を立ち上げたほか、「甘い服」「かたちの服」(いずれも文化出版局)などの著作でも知られています。
-ファッションに目覚めたのはいつごろなんですか?
「小さいころから、服は好きでしたね。初めて作ったのは3歳ぐらいのとき。親に教えてもらいながら、スカートを縫いました。次第に形になるのが、すごくうれしかったのを今でも覚えています。大きくなってからは、カラフルな留め具のオーバーオールとかが好きで。周りの女の子たちの間では、ピンクや甘いフリルが流行ってたんですが、他の子が着ているものじゃなく、男の子っぽいけど私だけのポイントがある。そういう服が好きでした」
-大学では染織を専攻されていましたが、なぜ服作りの道に?
「大学時代は布や糸を使った作品やテキスタイルを手掛けていたんですが、どこかモヤモヤが残っていて…。服は、布のように飾って鑑賞するだけでなく、着て動けば、その瞬間ごとに姿が変わる。機能性やサイズの制限はあるとはいえ、そういう意味で、服は『身に着けられるアート』であり、『自分を表現するもの』だと感じたんです」
-斬新なアイデアの作品は、日本だけでなく、ドイツを始め海外でも話題です。
「前から、モノの形の服が作りたいな、と何となく思ってたんです。普通、服を作るときって、効率化のためにも原型を作り、型紙に展開し、布を切って縫製していきますよね。でも、モノから発想するって、根本から違う動き。日常生活では全く相いれないけれど、ハシゴのサイズ感とか、冷たくて固いものが柔らかく暖かいものになる…とか、いわゆる『服』の枠を超えた面白さが伝えられるのでは、と」
-どれぐらい作ってみたんですか?
「デザインを考えては片っ端から作ったので、めちゃくちゃ失敗しました。例えば、毛糸玉は服になりそうでいて、いざ作ると外に着て出られない。薬のシート、鍋、ポットなんかも、舞台衣装みたいになっちゃった。その中で、はしごのストールは、実は3メートルの長さがあるんですが、クルクル巻けてボリュームも出るし、固いモノが柔らかくなる意外性もハマりました」