「公園内は全面禁煙です」。そんな文言の看板を掲げているのに、園内に喫煙所があるのは矛盾だ―。京都府宇治市広野町の府立山城総合運動公園(太陽が丘)でウオーキングを楽しむ60代男性から、疑問の声が京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。実際に太陽が丘を訪れてみると…。
管理事務所「強調のため看板」
男性の言う通り、確かに三つある入り口に「全面禁煙」の看板が立つ。しかし園内を巡ると「喫煙所」が3カ所に設けられていた。テニスコート近くにあるのはテントで覆われているが、公衆トイレとバス停近くの2カ所は灰皿が置かれているだけ。男性は「歩いていると煙が流れてきて臭い。やっと全面禁煙になったと喜んでいたのに…」と憤慨する。
管理する府公園公社山城総合運動公園管理事務所に尋ねた。受動喫煙防止の努力義務を定めた2003年施行の健康増進法を受け、06年に建物内をまず禁煙に。野球場ベンチなどに置かれていた固定式灰皿を含め園内52カ所の喫煙所も段階的に減らし、17年12月に現在の3カ所になった。
例の看板も17年12月に設置した。同事務所は「健康に資するスポーツ施設で、子どもの利用も多い。来園者に禁煙の意識を持ってもらうため、インパクトが欲しかった」と狙いを語る。子連れの30代女性も「喫煙する人が少しでも減るなら強調してもいいのでは」と理解を示す。
同園は広さ約100ヘクタール、年間入場者数は約135万人に上る。同事務所は「究極的には喫煙所ゼロの『全面禁煙』が望ましいが、これだけ広いと隠れて吸う人やポイ捨てが増える可能性がある」と対策の悩ましさを語る。
同じく大規模施設で家族連れの多い多摩動物公園(東京都)は、昨夏から園内の喫煙所を無くしたが、喫煙者の配慮を求める意見が2件寄せられたほか、混乱はないという。
昨年7月改正の健康増進法によって、行政機関も今夏から「敷地内禁煙」になる。府健康対策課は「太陽が丘は該当しないとの理解だが、詳細は厚生労働省に確認している」。
一方、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は競技会場の敷地内を完全禁煙にすることを決めた。21年には太陽が丘でも生涯スポーツの世界大会「関西ワールドマスターズゲームズ」が開かれる。同事務所は先を見据え、「利用者から意見を聞いているところで、園内の喫煙所の場所や在り方は今後検討していきたい」とする。
(京都新聞「読者に応える」から)
→京都新聞のウェブサイトはhttps://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190315000052
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