「喫煙者が異常に増えた場所がある。昼時はすごい」。札幌市の50代女性から札幌中心部で屋外の喫煙が増えているという投稿が「みなぶん特報班」に寄せられた。調べてみると、密閉・密集・密接の「3密」がそろう喫煙所は、新型コロナウイルスの感染予防のために相次いで閉鎖され、喫煙者が行き場を失っている現状が浮かび上がった。
女性が指摘した場所は、中央区北5西7。JR札幌駅西側の高架下に沿って続く歩行者専用道「札幌桑園停車場緑道線」の一角だ。女性は緑道をよく通るといい「4月以降に喫煙者が増えた。近くを通るとたばこの臭いがひどい」と嘆く。
5月26日昼に取材した。正午を過ぎると、昼休み中とみられるスーツやワイシャツ姿の男女が緑道を訪れ、喫煙を始めた。
駅の近くだけに歩道は通行人も多いが、午後0時半ごろには、隣の西8の区画も含めて喫煙者が20人ほどまで増えた。隣の人と数メートルの間隔を空けてビルの壁に向かって紫煙をくゆらせる列ができる一方、歩道のベンチで吸う人もいた。
喫煙していた50代の男性会社員に声を掛けてみた。勤務先のビルの喫煙所が閉鎖され、3月ごろから緑道を訪れるようになったという。「1週間くらい前からここで吸う人が一気に増えた。自分は通行人が来たらマナーとして壁側を向く」と話した。
道庁付近も
新型コロナ対策で喫煙所の閉鎖が相次ぐ。緑道近くの高層のオフィスビルは4月27日にビル内の喫煙所を閉鎖。JR北海道も3月から札幌駅の喫煙所を使用停止にしている。駅付近の商業施設や大通公園西3の喫煙所なども閉鎖中で、どの喫煙所も「当面は閉鎖する」という。
道も5月末で廃止予定だった道庁(中央区)の喫煙所を4月24日に前倒しで廃止。一方、周辺の住民らによると、庁舎から100メートルほど離れた北大植物園付近の歩道で喫煙者が目立っているという。
受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が4月1日から全面施行となり、公共施設や飲食店などでの喫煙も制限されたが、屋外は規制対象ではない。札幌市は条例で中心部の一部を喫煙制限区域に定めているが、今回の緑道や植物園付近は区域外となっている。
緑道を管理する中央区土木センターは、昨年秋から路上喫煙の苦情が数件寄せられたため、受動喫煙防止を呼び掛けるポスターを5枚ほど掲示した。今月にも1件苦情が寄せられたため、近くポスターを10枚ほど追加して貼るという。
禁煙考えて
分煙を推進する「喫煙文化研究会」(東京)の山森貴司事務局長(47)は「喫煙所を探す努力をしつつ、屋外で吸う場合はほかに喫煙者がいたら、煙が集まらないよう少し待つなど工夫が必要」と話す。
日本禁煙学会理事で、道北勤医協旭川北医院の松崎道幸院長(69)は「少量の煙でもぜんそくや狭心症を患う方が吸い込むと、発作を引き起こすリスクがある」と指摘。「喫煙所が閉鎖されたことで、禁煙について真剣に考える機会にしてみては」と話している。
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