東京都に住む長坂さんは、5匹の保護猫と暮らしている。その中の1匹ごまちゃん(女の子、1歳)は、長坂さんが保護活動をしている静岡県で発見された。まだ産まれたてのほやほやの子猫だった。
野良猫が暮らしやすい町
2018年1月10日、長坂さんは、仕事でバタバタしていたが、静岡県にある妻の実家を訪れた。長坂さんは、この地域で野良猫の保護活動を個人で行っている。
「のどかな田園風景が広がるところで、4、5軒の民家の敷地内を野良猫が自由に出入りしているんです。このあたりは交通量も少なく、とても猫が暮らしやすいところなのですが、誰も不妊手術のこととか考えないので子猫がどんどん産まれてしまいます。私は産まれた子猫たちの譲渡活動を個人でしているんです」
この日も長坂さんは、野良猫たちの様子を見るために時折妻の実家を訪れたのだが、思わぬ事態が待ち受けていた。
グレーの野良猫コグレのお腹のあたりで動くものが?
仕事が忙しくても野良猫のことが気になった長坂さん。妻の実家には、軒先に野良猫が休める小屋のようなものを作っている。
当時、家の中と外を出入りしている半野良猫のコグレちゃんがいた。グレーの野良猫は結構いたのだが、そのなかでも一番小さかったので「コグレ」と名付けた。
その野良猫が小屋のところにいたのだが、お腹のあたりをコグレと同じグレーのものがもぞもぞ動いていた。
もうすっかり日もくれて、真っ暗だったのではっきりとは見えなかったが、何かが動いている。「なんだろう」と思った長坂さんは、懐中電灯で照らしてみた。
産まれたばかりの子猫たち
よく見てみると、コグレのお腹のあたりには、産まれたての子猫がいた。コグレが乗っていた敷物ごと家の中に運んでみると、羊水で濡れていて、胎盤やへその緒がついたままの4匹の子猫がいた。みんなグレーの被毛だった。
コグレは胎盤やへその緒を食べて、子猫たちをきれいにした。長坂さんは慌てて、「だめだよ、そんなものを食べたら」と言ったが、母猫は胎盤やへその緒を食べる。
長坂さんは、子猫たちを家の中で飼うことにして、コグレは外に行きたがるので、半野良生活を続けられるようにした。コグレが上に乗ったため窒息したのか、1匹の子猫は亡くなってしまった。
「2匹の子猫は譲渡先が決まったのですが、1匹の子猫は、めがねざるみたいな感じで、器量が悪く、里親が見つかりませんでした。それで、うちの子にすることにしたんです。名前はゴマにしました」
2018年3月14日、ゴマちゃんは、長坂家の子になった。足が短いからかジャンプが苦手で、40cmくらいのところに飛び乗るのが精一杯。そんな姿も可愛いが、足を速く動かして走るのは得意なんだという。