「ブサ猫だけど、こんな可愛い猫はいない」 死産を経験した野良猫、ほうっておけず我が子に

渡辺 陽 渡辺 陽

人懐っこい野良猫

凪ちゃん(3歳・メス)は、沖縄県で野良生活を送っていた。昨年1月6日、沖縄県に住む中村さんが実家に向かって車を走らせている際に、視線を感じて外に目をやると、1匹の猫がいた。どこにでもいる普通の野良猫だったが、なぜか気になって車を停めて写真を撮った。その猫が凪ちゃんだった。

しばらくして実家のお母さんから「最近人懐っこい野良猫がよく家にくる」という連絡を受け、行ってみると凪ちゃんだった。野良猫なのにまったく警戒せず、人の足にスリスリ、ゴロンッとお腹を見せて触らせてくれ、とても人懐っこい感じだった。

しかし、身体は小さく、痩せ細り、汚れていて匂いもひどく、いつも鼻ちょうちんを作り、目ヤニや鼻くそがついていて、クシャミばかりしていたという。

長くは生きられないかもしれない

猫好きなお母さんは、凪ちゃんが家に来るとごはんを与え、中村さんも凪ちゃんに会うため、仕事帰りに実家に寄るのが楽しみになった。しかし、日が経つにつれ、お腹が大きくなり妊娠していることが分かったという。

昨年4月27日の朝、普段はまったく鳴かない凪ちゃんが大きな声を出し続け、まるで「産まれる!助けて!」と言っているようだった。その鳴き声を聞いたお母さんが急いでダンボールと毛布を用意したが、中村さんが帰宅後様子を見に行くと、3匹の小さな子猫はへその緒がついて、膜も張ったまま死んでいた。凪ちゃんは育て方が分からなかったのか、死んだ子猫の上に座り、疲れきった表情をしていたという。

「『これ以上子猫が亡くなるのを見たくない。凪に苦しい思いをして欲しくない』と家族と相談し、避妊手術を行うと決めました。それからがこの子の保護生活の始まりです」。保護してから避妊手術や血液検査をして身体の状態を見てもらうと、白血病であることが分かった。「獣医さんに『長生きはしないかもしれない』と言われた時は、涙が止まりませんでした。ほんの少しでもいいからたくさん美味しいものを食べて、好きなだけ眠ったり遊んだりして、たくさん甘えて欲しい。そう思っていたら飼うという選択しかありませんでした」

凪ちゃんという名前は、当時流行っていたドラマの主人公の名前だが、沖縄の海を連想させる〝凪〟という想いも込めた。

ブサ猫だが、最高に可愛い猫

保護してから2ヶ月くらいは実家で飼っていたが、毎日、下痢や嘔吐が続き、猫アレルギーのお母さんの限界もあり、凪ちゃんは中村さんが引き取ることになった。

先住猫のせーらちゃんと対面してからは、なぜか体調が良くなり、同じ部屋で過ごしていたが、獣医師が「白血病の猫は隔離して暮らすのが望ましい」と言ったので、1つの部屋での隔離生活が始まった。

すると、凪ちゃんは再び下痢や嘔吐をするようになった。

「せっかく先住猫と仲良くなれたのに、会えないとストレスを感じているように思えました。それから獣医さんと相談して、白血病が感染するリスクは十分にあるけれども、『同じ食器は使わず、こまめに掃除をする』ということを徹底し。同じ部屋で飼うことにしました」

凪ちゃんは野良時代から、本当に甘えん坊の猫だった。「ソファーに座るったり床であぐらをかいたりすると膝の上に、腕立て伏せをしていると背中の上に乗ってきます。立ってTVを見ていても肩までよじ登りるんです。野良とは思えないほど人の温もりが大好きなんです。寿命が短いと聞いてからは、1日1日すべてが大切な思い出ですが、食欲旺盛で体の調子も良くなってきています」。凪ちゃんには1日でも長く生きて欲しい。中村さんは、できるだけ凪ちゃんにストレスを与えないようにして、伸び伸び自由に暮らせるよう気を配っている。

「正直、ペットショップで売っている猫に比べればブサ猫ですが、こんな可愛い猫はどこにもいません。覚悟を持って病気の子を迎え入れたからには、どんなことがあっても最後まで責任をもって、家族として暮らしていこうと思っています」

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