『ブギウギ』戦死した六郎へ…スズ子が熱唱した「大空の弟」 実は楽譜だけが見つかった“幻の曲”だった 現代に蘇らせた制作秘話

佐野 華英 佐野 華英

「どこにどうしているのやら いつも〇〇 〇部隊 〇〇方面 〇〇隊 〇〇〇ばかりなり 〇〇〇ではわからない」ーー。現在放送中の『ブギウギ』(NHK総合)第10週「大空の弟」ではスズ子(趣里)と梅吉(柳葉敏郎)のもとに六郎(黒崎煌代)の戦死公報が届いた。12月7日放送の49話ではスズ子がステージで「大空の弟」を歌い、六郎を思う悲しみが痛切に伝わってきた。

「この曲をドラマで表現するのは難しい作業でした」

「大空の弟」は、羽鳥善一(草彅剛)のモデルである服部良一さんが、スズ子のモデルである笠置シヅ子さんの弟の戦死を追悼し、作詞作曲した同名曲をもとに作られた。機密情報のため伏字(「〇〇」)ばかりだった当時の報道をモチーフに、笠置さんの心情に寄り添って書かれた歌詞には、兵士として戦地に散っていった人、そして残された家族の断腸の思いが表れている。今週の週タイトルにもなっているこの曲に込めた思いを、制作統括・福岡利武さんに聞いた。

「服部良一さんが書かれた実際の楽譜が数年前に見つかったのですが、この曲をドラマで表現するのは、本当に難しい作業でした。楽譜だけが見つかり、音源は存在しなかったので、スズ子がどういうリズムでどう歌うのか、音楽を担当していただいている服部隆之さんと、たくさん議論を重ねました。歌詞は、ドラマの内容に合わせて少しアレンジしています」

「六郎への気持ちをしっかりと歌に込めたい」シーンそのままのステージ録音

 また「大空の弟」は、これまでにスズ子が歌ってきた「恋のステップ」「ラッパと娘」「センチメンタル・ダイナ」などとは違う方法で収録したという。福岡さんは、

「49話でスズ子が『大空の弟』を歌うシーンは、そのままステージで録音しています。この曲に限っては事前録音を用いて『うまく歌う』というよりも、ステージ上で六郎への気持ちをしっかりと歌に込めたい、というねらいがありました。趣里さんにとっては、六郎への思いを乗せた演技をしながら歌わなければならないので、とても難しかったと思います。仕上がりとしては、非常にエモーショナルな歌になったと感じています」

 と、撮影秘話を明かした。また、これまでの曲とは毛色が違う「大空の弟」が持つ特別な意味についても語った。

「今週は、スズ子と梅吉が六郎の戦死をどう受け入れるのかという、大事な週。その手がかりとなるのがこの『大空の弟』という曲です。原曲は、本来、戦争の歌を苦手としていた服部良一さんが、笠置さんの弟さんへの思いにふれて『これは曲にしなければ』と作られたといいます。当時戦争で息子や兄弟を亡くされた多くの方々の気持ちに寄り添う、本当にいい曲だなと思いました。また、良一さんの孫である隆之さんは、作曲者であるお祖父様の思い、そしてご自身の思いも、この曲に込められたのではないかと思います」

 六郎への思いを込めて涙ながらに歌い上げた「大空の弟」に続けて、「ラッパと娘」を力強く歌ったスズ子は、観客からの鳴り止まない拍手に笑顔を見せた。明日放送の50話でスズ子と梅吉は、六郎への思いをどのように語るのだろうか。

   ◇   ◇

『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 生瀬勝久 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽NHK BS・NHK BSプレミアム4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)

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