完全予約制、隠れすぎた幻のラーメン店に潜入 数千人待ちのスープ通販専門店

黒川 裕生 黒川 裕生

 この感動が冷めないうちに、と、予約の際に使ったfacebookを通じて水谷さんに改めて取材を依頼した。昼間は別の仕事をしていてかなり忙しいご様子だったので、何度かやりとりをした後で聞きたいことをまとめて送ったところ、「一言では語れない」と特別に時間を設けてくれることになった。

 前置きが長くなったが、実はここからが本題である。

 5月某日、午後1時。私は大阪府立花園高校近くの住宅街にいた。絵に描いたような古い文化住宅の2階。「やってます」という小さなプレートが掲げられた表札のない部屋の引き戸を開けると、壁という壁が布(ニトリのテーブルクロスらしい)に覆われたちょっと不思議な空間が広がっていた。ここが「ら道本店」だ。店舗としての営業は夜だけなので、昼間に私のような部外者が足を踏み入れることは、極めて異例だという。奥の厨房から現れた水谷さんが、この店を始めるに至った経緯を語ってくれた。

 もともとは、よくいる普通のラーメン好きだったという水谷さん。ただ、その「好き」の度合いが人よりやや強めで、20代の頃は友人たちと一晩に3~4軒ラーメン店をハシゴしたり、雑誌のラーメン特集に掲載された店をしらみつぶしに食べ歩いたりと、営業の仕事をしながら独自に「味の研究」を重ねてきた。食べたラーメンは全て、メモ帳にS(聖域)からD(おいしくない)までの5段階で評価して記録。データは最終的に、1200~1300軒分に達したという。この「活動」を通じて、どろどろ系のこってりしたスープが好きだと自覚を深めた水谷さん。「今度は自分で作ってみよう」と思い立った。20年ほど前のことだ。

 何から始めていいかわからない水谷さんは、まず精肉店へ。10kg分の豚骨を取り寄せ、寸胴鍋に入れて自宅のキッチンでぐつぐつ煮込んで見様見真似でスープ作りを始めた。

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