完全予約制、隠れすぎた幻のラーメン店に潜入 数千人待ちのスープ通販専門店

黒川 裕生 黒川 裕生

 ところが…

 「誰がやってもある程度はおいしくなると思うじゃないですか。これが大間違い。どれだけ煮込んでも、『動物臭のするお湯』にしかならないんですよ」

 最初の10kgを完全に無駄にしたことを反省し、水谷さんはようやくスープの作り方をきちんと研究し始めた。そもそも、骨を割って髄液を出さないとうまみが出ないことや、タレの調合の大切さなどを一から学び、1年ほど試行錯誤を繰り返して、ようやく今の味にたどり着いたという。

 「最初からこの味を目指したのではなく、いろいろ試しているうちに、いつの間にかこの味になったという感じです」

 最初のうちは自分で食べたり、友人に分けたりしていたが、次第に口コミで評判になり、「分けてほしい」という人が増え始めた。とうとう家で作れる量ではなくなった7年ほど前、仕事で付き合いのあった食品関係の会社の厚意で、月1回、厨房を使わせてもらえることに。食品衛生責任者養成講習会も受講し、遠方に住む友人2人に頼まれてスープを発送したのを機に通販も開始した。「らーめんスープ通販専門店」の誕生である。

 だがそんな折、食品会社の事情で厨房が使えなくなってしまった。「ラーメン店の居抜き物件も紹介されたけど、僕がやりたいのはあくまでもスープの通販で、ラーメン店ではない」と話す水谷さんは、親戚が所有している文化住宅の空き部屋に目をつけた。2013年夏から半年ほどかけてリフォームし、14年2月、スープ工房として“開店”したのが今の場所だ。

 すると今度は常連から「そこで食べたい」という要望が相次ぐように。水谷さんは保健所の許可を取って店舗営業も始めた。ただ、来店といっても、当時はせいぜい週に1~2件予約がある程度だったそうだが、15年5月、ダウンタウンの浜田雅功さんとロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが出演するロケ番組「ごぶごぶ」が、噂を聞きつけて訪問。「隠れすぎた名店」として2人の絶賛コメントと共に紹介されたことで、一瞬にして何百という予約が殺到してしまう。

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