東京最西端の山中にある“工場萌え”スポットを堪能…一部見学者のマナーに問題も

北村 泰介 北村 泰介
川原から仰ぎ見る工場。メタリックなボディーからも木が生えて緑葉が揺れていた=東京・奥多摩町
川原から仰ぎ見る工場。メタリックなボディーからも木が生えて緑葉が揺れていた=東京・奥多摩町

 「工場萌(も)え」という言葉がある。コンビナートの夜景など、SF映画のシーンを連想させる工場群の風景にゾクゾクすることだ。川崎、四日市、北九州、室蘭…。日本全国に名所は数々あるが、東京都内の山腹に要塞を思わせる巨大工場があり、“インスタ映え”するマニアックなスポットとしてSNSで話題になっている。現地に足を運び、インターネット情報では分からない課題や要注意ルートも体感した。

 都心から電車で片道約2時間を要する都内最西端のJR奥多摩駅。駅前に町役場と小学校、小さなバスセンター、夕方に閉まる商店や喫茶店が身を寄せ合い、四方を山に囲まれている。東京は広い。

 工場は駅のホームから見えている。改札から徒歩4分で渓谷にかかる北氷川橋に着き、橋の中央部から望む緑の中の工場は秘境の古城を思わせる。続いて橋の下を流れる日原川へ。マス釣りに興じる人たちがたたずむ、川原から仰ぎ見る工場の迫力に圧倒された。

 ネットではここ数年、詳細な情報がアップされ、見学に来る人も増えている。カメラを向けながら、ふと気になった。この工場は観賞用で作られたわけではない。意図しないところで好事家に注目さているわけで、そのあたりを、工場側はどうとらえているのか。

 工場を運営する奥多摩工業株式会社(東京都立川市)の総務担当者に話をうかがった。

 正式には奥多摩工業の氷川工場。石灰石の加工工場で、現在も稼働している。夜景も見ようとしたが、かすかに光がもれる程度だ。担当者は「基本は24時間稼働ですが、昔と違って夜間の照明は控えめにしています」と説明。川崎などの工場萌えスポットに比べて夜は寂しい感があった。

 記者が「絶景」と語った際、担当者の困惑を感じた。もっともだ。生産性を求めて作った工場を外観で評価されても首肯しずらい。また、その絶景を求める人たちのために困ったこともあるという。一部の見学者にみられるマナーの問題だ。

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