話題の「平壌冷麺」神戸の老舗も大盛況 どうなる?日朝首脳会談…店主ヤキモキ

山本 智行 山本 智行

 南北首脳会談の“橋渡し”に一役買ったことで「平壌冷麺」が注目を集めた。韓国・ソウルでは行列ができるほどの大ブーム。そこで、日本で初めて平壌冷麺を出した老舗を訪ねた。1939年創業の神戸・長田にある「元祖 平壌冷麺屋 本店」がそれだ。

 まずは、冷麺の歴史から。ルーツは北朝鮮にあり、平壌と咸鏡南道・咸興(ハムフン)が本場として知られる。ともに伝統的な家庭料理として親しまれ、ジャガイモのでんぷんで作られる「咸興冷麺」に対し「平壌冷麺」はそば粉で作られているのが大きな違いだ。

 「風土の違いでしょうね。平壌は寒いからそば。そのそば粉にでんぷん、小麦粉をまぜ、こねたものをクッストゥル(製麺機)に入れると麺が出来上がります。直後に冷水でサッと締めるのも大事。麺の色は黒っぽいのもありますが、うちではそばの芯の部分をつかっているので白っぽいです」と4代目・張守基さん(36)が教えてくれた。

 スープは、トンチミ(大根の水キムチ)から出た汁をベースに牛肉スープを加えたもの。そして意外にも、本来は冬場の食べ物だという。「日本で言えば、こたつに入って冷たいアイスを食べるみたいな感覚ですかね。現地ではオンドルで部屋を暖かくして食べるのが通みたいです」。

 そうこうしている間に3代目・張秀成さん(65)による名物の平壌冷麺大(800円)が出来上がり、早速いただくことに。この日は気温も上がっており、最高のシチュエーション。うまいのなんのって。スープは少し酸味と甘味があって、さっぱり味。麺もコシがありながらも、程よい長さだからツルツルと食べやすい。一気にスープまで飲み干してしまった。

 「発酵しているので整腸作用があって、美容にもいいんですよ」

 創業は1939年だから来年80年を迎える。「元々、平壌生まれの曽祖母が故郷の味を同郷の人々に味わってもらおうと、作ったのが始まり」。阪神大震災の際も「みんなを元気づけよう」と半年後にはプレハブ小屋で再開した。張ファミリーはどんどん広がり、一時は最大7店舗まで増えたが、現在はこの本店と長田川西店、久保町店の3店舗に落ち着いている。

 韓国の友人から聞いた話では、南北首脳会談の際に金正恩氏が持参した影響で「平壌冷麺が大人気になっている」とのこと。実は、ここ長田にも大きな影響を及ぼしていた。50年以上通い続ける地元の常連客がいる一方で、首脳会談から日の浅かったGW中は11時半の開店前から20時の閉店まで行列ができるほどの大盛況。韓国・MBC放送が取材に訪れ、東京方面はもちろん、韓国、米カリフォルニアからの客もいたという。

 “冷麺効果”もあって南北友好モードは高まったが、米朝首脳会談の先行きは不透明。中止発表したかと思えば、一夜明けて予定通り12日の開催をほのめかすなど、トランプ大統領の言動に世界が注目している。守基さんも「開催されればいいですね」と気をもんでいる1人だ。

 実現したとして、肉好きのトランプ大統領が平壌冷麺にどう反応するのか、しないのか。朝鮮には「先酒後麺」とか「麺食い腹は別にあり」という言葉がある。話題の平壌冷麺。いろんな意味で、しばらくは熱い日が続きそうだ。

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